157キロ右腕が、この秋は「緩」に取り組んでいる。
福谷浩司は2年目の今季、両リーグ最多の72試合に投げ、防御率は1.81。途中まで断トツだったホールドが最終的に32止まりでタイトルに届かなかったのも、岩瀬の故障離脱後はクローザーに昇格したからだ。大ブレークの原動力は剛速球にある。「急」は一流。だからこそ「緩」。福谷が秋季キャンプで挑んでいるのは、新球のパームボールだ。
「今は秋なので、今だからこそやれることに挑戦しています。沖縄(来春のキャンプ)では、必要なことをやらなくちゃいけませんから。ダメならやめればいい。でも、やれるだけやってみよう。そういう考えです」
往々にして、その投手の代名詞となるようなウイニングショットは、このような遊び心から生まれるものだ。パームが加われば、福谷の持ち球の中では最も遅い。打者は球速差についていけない。
もちろん、最も大事なのはオフの間に習得可能かどうか。友利投手コーチとも話し合いながら、練習を重ねている。
「腕の振りに関しては問題ない」というのが友利コーチの評価。ブルペンで受けてくれるスタッフの声もおおむね前向きだ。打者相手に投げるのは2月以降。まだ踏むべきステップはたくさんあるが、モノにできれば福谷の投球の幅は飛躍的に広がるはずだ。
「忘れてはいけませんが、僕の基本はあくまでもストレート。それをしっかりとやりつつ、パームを使えることができれば」
来季はセットアッパーで勝負するのか、それともクローザーの世代交代が実現するのか。竜投の大きな注目点なのは間違いない。