ある意味で、今シーズン最も注目された新人だった。
田中英祐のルーキーイヤーは、京大初のプロ野球選手として野球ファン以外からも多くの視線を集めた。想像よりも早く4月29日の
西武戦(QVCマリン)で一軍デビュー。ところが、2試合に登板して0勝1敗、防御率13.50という不本意な成績に終わった。
「最初は良かったんです。キャンプとかオープン戦。そして二軍での試合で投げ始めたころまでは。徐々に投げ方というか、感覚がよく分からなくなっていって」
原因はいくつかあった。まずは体力面。単純な体力に問題はなかったが「試合で投げる体力がなかった。回復力を含めた"肩の体力"がまだ足りていなかった」と話すのは川越二軍コーチ。アマチュア時代では考えられないほど必要とされる体力。プロ1年目で誰もが突きつけられるカベが、田中英の前にも立ちふさがったのだ。さらに、結果が伴わない日々が続いたことで、田中は「考え過ぎてしまって、どんどん分からなくなっていった。そのままシーズンが終わってしまいました」と振り返る。
好奇の目にさらされたとまでは言わないが、ほかのルーキーとは違う注目のされ方をしていたのは事実だ。だが、田中英は苦難の連続だった1年目のすべての経験を来年への糧にするつもりだ。
「この世界に入ってきて良かった。本当にそう思っています。来年はもっと野球で注目してもらえれば」
決して話題性で指名されたわけではない。潜在能力の高さは一、二軍の首脳陣も認めている。大学時代のようにエースになるだけの力は備えている。成功体験と自信さえ手にすれば、必ずプロでも光り輝くはずだ。