どっしり座るだけで、与える安心感が違う。
石原慶幸が好調な
広島を支えている。
象徴的だったのはマツダ広島で行われた4月30日の
中日戦だ。先発の黒田は「苦しかった。石原がうまく導いてくれた」と振り返った。直球の力はいまひとつ。マスク越しの観察眼だった。緩急と動かすボールで黒田を白星へと導いた。「良かったです。まとまっていた」。石原は静かにうなずいた。
明暗を分けたのは中日の四番・
ビシエドとの勝負だ。6回一死一、二塁。一発を浴びれば1点差に迫られるピンチを背負った。バッテリーは初球から4球連続でツーシームを選択。全球を内角の厳しいコースに投げ切り遊ゴロに打ち取った。第1打席で同様の攻め、第2打席ではスライダーを意識させた。ベテランバッテリーならではの徹底した配球だった。捕手というポジション柄、あまり目立たないが「石原が裏をかいてくれる」と緒方監督も最大級の評価を下している。
開幕当初、石原のスタメンマスクはジョンソン、黒田が先発する試合が主だった。だが巧みなリードで出場機会を自然に増やした。次第に野村、横山が先発する試合でもマスクをかぶるようになった。
打撃では適時打を打っても「覚えていない」とおどけるが、時折見せる勝負強さも健在だ。36歳。休養日も必要で、成長著しい會澤の存在もある。だが石原にはやはり、唯一無二の存在感がある。