
常に準備を怠らない伊藤光。球場入りは誰よりも早く、休日返上で打撃練習を行うことも
真っすぐな言葉から、不本意さが伝わってきた。
「1年間マスクをかぶれていない。今シーズンはそこも目標だったから。素直に悔しい」
シーズンはもう終盤。プロ10年目を迎えた伊藤光は今、何を思っているのか。そう問うと返ってきた言葉だ。
かつてゴールデン・グラブ賞にも輝き、球界を代表する捕手の座までのぼりつめた。しかし、昨季から正捕手を
若月健矢が務め、出場機会が減っている。それでも前を向き続けてきた伊藤。「出たら勝ちたい。勝つ瞬間までマスクをかぶっていたい」と残り試合で一戦でも多く勝利に貢献することを望んでいる。
伊藤の朝は早い。ナイターの日の全体練習は通常14時からだが、10時30分には球場入り。誰もいないウエート場で黙々と準備をする。背番号22にとって、全体練習はあくまでも試合に向けた練習の時間。それまでに1人での確認作業や自分のための練習を終えておくのが、日々のルーティンだ。休日返上で打撃練習をすることも。出番がいつきてもいいように、どんなときでも準備は怠らない。
自身のポジションを守る立場から追う立場になったことで、気持ちの変化も生まれた。「今は1試合出るのに必死。今までは次があるって考えたりもしていたけど、今はそうじゃない」。今季は三塁にも挑戦。試合に出るため、試合に勝つため、ガムシャラに走り続けてきた。だからこそ、このままでは終われない。節目のシーズンをいい形で締めくくるべく、もうひと花咲かせる。
写真=湯浅芳昭