
12球団屈指の強肩を武器に甲斐は、常勝軍団の中で居場所をつかんだ
育成出身捕手が、一気のブレークでチームの快進撃を支えた。
9月9日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)。今季73試合目のスタメンマスクを任された
甲斐拓也が、先発した同じ育成出身の
千賀滉大を好リードした。3投手の継投で1失点だったチームは8連勝。優勝へのマジックを「6」に減らした。
「自分はまだまだ学ばなければならないことが山積みです」。試合終盤にベテランの
高谷裕亮にマスクを譲った甲斐はそう謙そんしたが、チーム最多の先発マスクをかぶった男の飛躍なくしてリーグ独走劇はあり得なかった。
2010年秋のドラフトで、球団では最後の育成6位で指名された。当初は獲得リストにも載っておらず身長170センチと小柄な点も大きなネックだったが、育成での最下位指名につながったのは体型を補って余りある肩の強さ。入団後は主に三軍で汗を流し、13年オフに支配下登録をつかんだ。
それでも14年から昨季までの3年間は、一軍では途中出場によるわずか15試合の出場。「勝負の年と思っていた」と並々ならぬ覚悟で支配下4年目に挑んでいた。
若手捕手の育成は球団の長年の課題だっただけに、開幕から高谷との併用で試合出場を続けたが、日に日に首脳陣の信頼は厚くなった。今や球界屈指とまで評されるようになった自慢の強肩だけでなく、バットでも勝負強さを発揮。5月2日の
西武戦(ヤフオクドーム)ではプロ1号となる逆転満塁弾も放った。
球団にとって、甲斐の飛躍は来季以降を見据えても明るすぎる光となった。
写真=BBM