
宮西の投球の生命線となっているスライダー。相手バッターにとっても脅威のボールである
日本ハムが誇る鉄腕サウスポーには、絶対的な球種がある。
宮西尚生はスライダーを駆使し、球界を代表するセットアッパーにまで上り詰めた。今シーズンも51試合に登板。入団以来10年連続で50試合以上登板は史上2人目の快挙だった。秀でた宝刀を自由自在に操り、使いこなしてきたからこそ、たどり着いた勲章でもあった。
長年バッテリーを組んできた大野はかつて宮西のスライダーを次のように評した。「日々の状態を見ながら1つの球種を何種類にも投げ分けている。技術の高さは本当にすごいと思います」。ケースバイケースで、曲がり幅や縦横の変化を絶妙に投げ分ける。同じ球種を武器に一線を走り続けられる理由が、ここにある。
プロ入り後の出会いも大きかった。1年目の春季キャンプ中に厚澤コーチから腕を下げて投げるようアドバイスを受けた。これがハマった。左打者にとっては恐怖感を覚える投球フォームとなり、得意のスライダーも生きた。左だけでなく、右打者にも適応。投球術も年々進化し、今シーズンは通算250ホールドも達成した。
近年はシンカーも習得したが、ピッチングの軸になるボールはやはりスライダーだ。そのイメージを利用した配球も見せるなど、パフォーマンスの幅もさらに広げている。1つの失投が命取りとなる過酷なポジションだが、エゲつない曲がりを見せる唯一無二の“伝家の宝刀”で、プロ野球人生を切り開き続ける。
写真=BBM