
貴重な中継ぎ左腕としてフル回転した高梨
発展途上のボールでも、
高梨雄平のスライダーは対左の大きな武器になっている。ドラフト9位でのプロ入りだったが、ルーキーイヤーは46試合に登板し1勝0敗、14ホールド、防御率1.03。特に対左は被打率.133と、左キラーとして一軍に欠かせない戦力となった。
昨夏、サイドスローに転向した。スライダーについては「上からと同じ感覚で投げると全部抜ける。握りも感覚も全部ゼロから」と振り返る。試行錯誤を繰り返しながら、ようやく手応えを手にしたのは今春キャンプイン2日前のことだった。「キャンプの2日前に、ようやく曲がったんです。その感覚を忘れないように投げていました」と笑った。
スライダーが最も輝きを放ったのは、10月9日の
日本ハム戦(Koboパーク宮城)だった。7回一死満塁、打席には大谷。メジャー挑戦が噂される二刀流の今季最終打席、フルカウントからスライダーで見逃し三振。「フルカウントだったので思い切り腕を振っただけ。いい角度のスライダーでした」。思わず腰を引いた大谷は、手が出なかった。
勝負の場面で選択した決め球。それでも「大事にしている球ではあるけど、自信を持って投げているわけではない」と発展途上を強調する。初めて曲がってから1年もたたない球は、まだまだ修正点もある。「理想は振らせないこと。振らせなければリスクはゼロ」と語る左腕が、伝家の宝刀へと進化させていく。
写真=佐藤真一