
抜群の制球力を発揮する野村
野村祐輔の生命線はコントロールだ。好調時には「ラインが見える」と表現する。リリースポイントから捕手のミットへの線。軌道に乗せることで、ボールは外角低めいっぱいに吸い込まれていく。伝家の宝刀とも言えるスライダーは、そのラインから捕手のミットギリギリで鋭く外角に逃げていく。「長い間投げているボール。感覚がある」と語るように、体に染みついた技術。少々のことでブレることはない。
野村は2016年にプレートに足をかける位置を変えた。それまでは三塁側を踏んでいたが、一塁側に変更した。わずか30センチほどの小さな変化。だがこの変化が野村のもうひとつの武器を鋭くさせた。右打者の内角に食い込むシュートだ。「気持ち的にもラクになった」。わずかな変化ながら、空間を立体的にとらえることができたと言う。ベース盤を広く使うことで投球にも幅が出た。もちろん外角へのスライダーは、染みついた感覚で今までどおりの制球を発揮。16年の最多勝へとつなげた。
今季は惜しくも2ケタ勝利を逃し9勝だったが、ゲームメーク能力を発揮。一度腰痛のために外れたが、先発ローテーションを守り続けた。9勝5敗で防御率はリーグ4位の2.78。クオリティースタート率は68パーセントをマークした。チームトップで、リーグでも4番目の数字だ。
ポストシーズンを前に、野村は語る。
「僕たちは(日本一まで)7勝するつもりでいるので」
エース格の自覚をにじませた。
写真=BBM