
まだまだ伸びしろ十分な長谷川宙。背番号が2ケタになる日も近いかもしれない
千賀滉大、
石川柊太、
甲斐拓也。昨季日本一に貢献した彼らには共通点がある。いずれも入団時は育成契約。そこからはい上がってきたのだ。そして今季2年目を迎える
長谷川宙輝もまた、将来の
ソフトバンクを背負うであろう背番号3ケタの有望株である。
聖徳学園高から2017年育成ドラフト2位で入団。高校時代は西東京のドクターKと称され、2年秋の都大会ブロック予選では1試合20奪三振を記録したこともある。プロ入り後は「まずは体をしっかり作ることを目標」にウエート・トレーニングも本格的に開始。
田之上慶三郎、
入来祐作両三軍投手コーチの指導の下でひたむきに練習に取り組んだ成果は長谷川宙自身も驚くべきものだった。
球威を増したストレートに切れ味鋭いスライダー。9月19日のウエスタン・リーグの
オリックス戦(舞洲サブ)では自己最速149キロを記録する衝撃的な二軍デビューを果たし、ファーム3試合登板で被安打2、6奪三振。
水上善雄二軍監督(現一軍内野守備走塁コーチ)も「間違いなくいい素材。一軍に通用する素材だと思います」と目を細めた。クライマックスシリーズに向けた一軍の紅白戦にも招集され、ヤフオクドームのマウンドで主力打者と対峙。秋季キャンプでは“工藤塾”のメンバーにも選ばれ、
工藤公康監督から直々に指導を受けた。昨季一軍デビューを飾った
笠谷俊介、17年ドラフト2位の
古谷優人とともに左腕王国建立に期待がかかる。
称賛の声は首脳陣だけにとどまらない。昨年12月、筑後のファーム施設で練習をともにした千賀は、長谷川宙とのキャッチボールに「すごい球。速い」と驚きの声を上げた。「和田(毅)さんほどじゃないけど、球の出どころが見えにくいフォーム」。いまやチームに欠かせない存在となった育成出身の先輩投手からの太鼓判は、その背中を追う長谷川宙にとって確かな自信となったに違いない。
今オフに新調した練習用グラブには『今がイチバン』の刺しゅうがある。これは長谷川宙が好きなアイドルグループ、HKT48(うまくち姫)の1番好きな曲のタイトルだという。「この曲を聴くと頑張ろうっていう気持ちになる」。曲の歌詞にあるように「自分を信じて」「がむしゃら」に――。まずは支配下登録をつかみ、一軍のマウンドに立ってみせる。
写真=BBM