
春季キャンプはB組スタートとなった長谷川宙だが、昇格の可能性は大いに残されている
千賀滉大がグラブを外して「手、痛い」と苦笑いし、左手をぷらぷらさせた。真顔で「すごい球ですよ。速い」。福岡県筑後市のファーム施設でキャッチボールした後の感想だ。WBC日本代表でオールWBCチームにも名を連ねた右腕の相手は、一軍未昇格どころか、まだ育成選手のサウスポー・
長谷川宙輝だった。
今季まだ入団2年目。千賀からは「和田(毅)さんほどじゃないけど、けっこう嫌なフォーム。球の出どころが見にくい」と評価。「春季キャンプでA組(一軍)に来るんじゃないですか」と言うほどだ。長谷川宙はMr.Childrenの桜井和寿氏を輩出したことでも知られる東京・聖徳学園高出身。2年時に「西東京のドクターK」と呼ばれたが、甲子園出場経験が無く全国的には無名だった。
1年目は三軍で徐々に登板を重ね、二軍戦デビューも9月だった。ただ、そこで最速149キロを出したように、素材の良さはチーム内でも評判。工藤監督も素質を認めている一人で、昨秋キャンプでは若手有望株の一人として、強化指定選手的な位置づけで鍛えた。
育成選手はキャンプ前の1月から集合し、ファーム施設で合同練習を行う。聖徳学園高でトレーニングしてきた長谷川宙は「まずはここに向けてやってきました。1年前の新人合同自主トレではついていけなかったけど、今日はいい感じでした」とまだ初々しく話したが、遠くない未来、千賀級のインパクトを残す存在になると誰もが直感している。
写真=BBM