
守備の安定感はピカイチだ
決して目立つわけではない。でも、いないと困る。おそらく、
中日の首脳陣にとって
堂上直倫は「精神安定剤」のような存在だろう。鳴り物入りのドラフト1位で入団した強打者はその後、内野ならどこでも守れるユーティリティープレーヤーとなり、時には代打で渋い働きも見せる。
6月22日にナゴヤドームで行われた
DeNA戦。同点で試合は延長に入った。11回裏のサヨナラ機。無死一、二塁で「ピンチバンター」として起用されると、初球を一塁手の前にキッチリと転がした。好機拡大。その後の大島の押し出し四球につなげた。
1球で決める。当然、攻撃には流れが生まれる。堂上の“決定力”が呼んだサヨナラ劇には、
森脇浩司野手チーフコーチも称賛の言葉を惜しまない。「何球かかってでも成功してほしい場面。しかも、一発で決めた。
大島洋平と同じぐらいのヒーローです」。
14日の
楽天戦(楽天生命パーク)では同点機の無死一塁で同じように代打起用され、痛恨のバント失敗。その8日後、同じ轍を踏まなかった堂上は「絶対に決めようという強い気持ちだった。練習から意識してやってきた」と安堵の息を吐いた。
縁の下からであっても、チームの白星を支えることはできる。昨季は
京田陽太に遊撃の定位置を譲った。不本意なシーズンに期するものがあっても、己がするべき準備を黙々と重ねる。愛工大名電高から3球団の競合でプロ入りした、超高校級スラッガーも29歳。渋い輝きが似合う年齢になってきた。
写真=BBM