調子が戻り、守備や走塁でもはつらつプレーを取り戻した
ルーキーイヤーの勢いと比べれば、物足りない時間が長かった。昨季のセ・リーグ新人王を獲得した
京田陽太は、もがき苦しんでいた。球界で言われる「2年目のジンクス」にはまっていた。
1年目の昨季は遊撃のレギュラーを奪い、1年間試合に出続けた。バットでも安打を量産。球団新人最多となる149安打を放ち、プロ野球人生で一度限りの称号を手にした。
ところが……。「どつぼにはまっています」。交流戦を終えたころ、京田がつぶやいた。6月17日の
西武戦(メットライフドーム)の第4打席から安打が止まった。「練習は悪くない。でも、打席に入ると考え過ぎてしまうというか……。どうすればいいんですかね?」。報道陣に尋ねたことさえあった。
好転のきっかけは支えてくれる存在だった。1人は葉月夫人。安打が出なくても「今日も打てなかったね」と声を掛けられたが「気を使わずに言ってくれることがありがたかった」。もう1人は
荒木雅博だ。過去に47打席連続無安打を経験した先輩に食事に連れて行ってもらい、話を聞いてもらった。
7月3日の
阪神戦(甲子園)で長いトンネルを抜けた。6回二死満塁の好機で、32打席ぶりの安打はリードを広げる2点適時打になった。「やっと出た。ホッとしました。涙? それは気のせいでしょ。でも、込み上げてくるものはありました」。
底を脱して安打も積み重ねられるようになった。昨季の新人王が、ようやく本領発揮を迎えている。
写真=BBM