
9月に入って疲れも見えるが、懸命に自分の役割を果たし続ける加治屋
長かった「助走」の分、大きく羽ばたいた。8月24日の
西武戦(ヤフオクドーム)。わずか1点リードの8回に、
加治屋蓮がこの時点でリーグトップとなる今季54試合目のマウンドに登った。二番から始まる強力西武打線を相手に、まずは
源田壮亮を低め直球で二ゴロに仕留めると、続く
浅村栄斗をスライダーで左飛に打ち取った。最後は主砲・
山川穂高を鋭いフォークで空振り三振。大事な8回に最少リードを守ると、チームはここから西武に3連勝し奇跡の逆転優勝へ望みをつないだ。
2014年に、社会人のJR九州からドラフト1位で入団した。だが右肩を痛めたこともあり、1年目の登板は二軍での1試合のみ。4年目の昨季までの一軍登板は計4試合だった。150キロを超す直球と鋭いフォークは大きな武器だったが、優し過ぎる気持ちが飛躍を邪魔していた。開幕一軍の当落線上にいた3月中旬、
倉野信次投手統括コーチから「インコースに投げられないならユニフォームを脱げ」と強烈なひと言を浴びせられた。自身に足りなかったものに気づかれると、その能力は開花した。
初の開幕一軍入りを果たした今季も、いわゆる「敗戦処理」からのスタートだった。それでも登板3試合目以降18試合連続無失点を記録。
サファテ、
岩嵜翔が不在の中、ベンチの信頼を日に日に高め、いまや勝ち試合に欠かせないセットアッパーにまで成長した。「今いないメンバーが戻ってきてもチームに信頼される投手になりたい」。まだまだ飛躍の途中だ。
写真=BBM