
惜しまれながらも、今季限りでの引退を表明した岩瀬
長らく竜の絶対的守護神として君臨した背番号13が“慣れ親しんだ”場所で前人未到の領域に到達した。9月28日の
阪神戦(ナゴヤドーム)。1点リードの9回だった。「ピッチャー、岩瀬」。ナゴヤドームに通算1000試合登板を表すアナウンスが響き渡ると、両軍から大歓声が沸き起こった。
「大歓声で久しぶりに足が震えた」。昔の定位置だったセーブシチュエーションは、今季初めてだった。
岩瀬仁紀は、後輩たちが並ぶ花道を通ってベンチから姿を見せると、ゆっくりマウンドに向かった。
いきなりヒヤヒヤさせられた。先頭の
糸原健斗を「いい感じで追い込めた」が、5球目が右腕に当たった。「まさか死球を出すとは思わなかった。どうなってしまうかと思った」と岩瀬。長年、二塁から背番号13を見てきた
荒木雅博は振り返る。「死球が当たってなおさら『抑えたな』と思いましたね」。荒木の“予言”どおり、岩瀬は群を抜く経験値の高さを見せつけた。「一人一人打ち取っていこう」と切り替え、
大山悠輔は中飛に取った。続く元同僚の
福留孝介は、2球目でバットをへし折る一ゴロ。
糸井嘉男も遊ゴロに仕留めて通算407セーブを挙げ、偉業に自ら華を添えた。
「まさかここまで来るとは思わなかった。長い……、長い道のりだった。今はうれしいというより、無事終わってとホッとしている」。ヒーローインタビューでは、めったに見せない涙を目に浮かべ、かみしめるように話した。
10月2日に今季限りでの現役引退を表明した。現役最年長選手が打ち立てた偉業の日は、黄金期をほうふつとさせる試合だった。
写真=BBM