
勝負強さが光る佐野。ここ数年、代打成功率の低さはチームの悩みだったが、待望の“切り札”誕生となるか
決して偶然ではない。本物の勝負強さが、
佐野恵太に備わってきた。胸を張り、
山崎康晃と2人でファンの大歓声を浴びたのが3月31日の
中日戦(横浜)。2対2と同点の9回一死一、三塁で、代打で出番が回ってきた。「自分で決めてやると思っていた」。カウントは2ボール1ストライク。中日・
小熊凌祐の外角直球を左前へ運んだ。自身2度目のサヨナラ打。就任4年目の
ラミレス監督にとって、開幕カードで勝ち越すのは初めてだった。
同27日には、球団OBで元監督の
近藤昭仁氏が死去。手元に届いたウイニングボールを「ご遺族に渡してください」と岡村信悟球団社長に託した。「偉大な先輩たちに並んで日本一になれるように……」とはお立ち台で添えた言葉。大目標を掲げても恥ずかしくないほど、その存在感は大きくなってきた。
2017年にドラフト9位で入団。全体の87人中、84番目の指名だった。即戦力としてはさほど高くなかった期待値を、ここまで引き上げたのは努力のたまもの。「自分もはい上がれるように」と必死にバットを振ってきた。オフの自主トレは同僚で先輩の
宮崎敏郎に師事。一昨年の首位打者と過ごした濃密な時間も、飛躍の足がかりとなった。
昨年73試合で5本塁打。今季はオール代打の4試合で4打数4安打8打点と、神懸かり的な活躍を見せている。開幕戦で2点二塁打を放ち、4月4日の
ヤクルト戦(神宮)でも試合を決める代打・満塁弾。横浜に“神様”が誕生しそうな予感だ。
写真=小山真司