
降格も貴重な経験となった
復調を感じさせる一発だった。5月6日の
西武戦(メットライフ)、1点を追う3回だった。初めて二番で起用された
辰己涼介が、本田のカットボールをバックスクリーンへ運んだ。ドラ1ルーキーのプロ初アーチが反撃の口火となり、チームは8点を奪って勝利。連敗を4で止めた。
外れ1位とはいえ、
巨人、
阪神、
ソフトバンクと4球団が競合した逸材。春季キャンプでは攻守走で光るものを見せ、開幕一軍入りを果たした。だがプロの世界は甘くなかった。打率.208と不振にあえぎ、4月22日に二軍落ち。
平石洋介監督は期待を込めて「打撃だけ(が課題)ではない」と語った。
二軍にいたのは10日間。「悔しかったけど力がないと再確認できた。少しでもレベルアップできた」。ほぼ連日、居残ってバットを振った。打撃はもちろん、走塁も一から鍛え直した。
「自分の打撃を見失っていた」。意識したのは、中堅や逆方向への強い当たりだ。バックスクリーンへの一撃は、確かな自信につながる。「自分のポイントに来た球をミスせず打てた」と笑った。
43打席目で一発は出たが、16試合に出場し盗塁は1つだけ。50メートル走を5秒7で駆け抜ける快足の持ち主としては、物足りない。平石監督は「今は余裕がある。ヒットが出て、気持ちも楽になったのではないか。プロの世界で、打率はメンタルが左右されるからね」とさらなる活躍を予想した。「原石」が今後どんな輝きを放つのか、楽しみにしたい。
写真=BBM