6月度の打者部門で月間MVPに輝いた鈴木
3月29日の
楽天との今季開幕戦(ZOZOマリン)。スタメン落ちどころか、最後まで出場なしに終わった
鈴木大地は試合後、バットを手に室内練習場へ向かった。チームの勝利は心底、喜んだが、この男には歓喜の余韻に浸っている時間はなかったからだ。
「毎日、自分のやれることを100パーセントやろうと思っている。それがチームのためになる」。出番の有無にかかわらず、昨季途中から始めた試合前のロングティーと試合後、室内練習場でのマシン打撃だけが心の拠り所だった。
レアードの加入で三塁の定位置は失ったが、中学時代以来の外野挑戦となった左翼、内野の全ポジションにDHと日替わりの仕事を黙々とこなした。
努力は報われるものだ。6月16日の
中日戦(ZOZOマリン)では5点差の9回に大逆転サヨナラ劇の号砲となる10号ソロに加え、打者一巡して回ってきた打席ではバットを折りながら、今季3度目のサヨナラ打を放った。
同18日の
広島戦(マツダ広島)では1対2の5回二死、
バティスタの本塁打になる打球を左翼フェンス際でジャンプし、ホームランキャッチ。これが左翼では2試合目で初の守備機会だった。「一生、覚えていると思う」。
交流戦は打率.368(2位)、6本塁打(5位タイ)、17打点(2位)とMVP級の働き。6月度の打者部門で月間MVPを獲得したのも、納得の輝きを見せた。
2本塁打した6月22日、
ヤクルト戦(神宮)のお立ち台で「本当に心が折れなくて良かった」と言った。バットは折れても、折られることのなかった自分を信じる力が、背番号7の原動力だった。
写真=BBM