
快投でチームを上昇気流に乗せた涌井
潮目が変わった試合だ。4月16日の
ソフトバンク戦(ZOZOマリン)。開幕14試合で借金は6。先発投手に白星がついたのは4月6日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)で6回2失点だった
二木康太のみで、歯止めが利かない状態だった。
先発マウンドに上がったのは
涌井秀章。3回二死二塁以降、パーフェクトに抑え、
西武のユニフォームを着ていた2010年7月16日の
ロッテ戦(千葉マリン)以来、9年ぶりの無四球完封でチームの連敗を4で止めた。「いつも四球を出すので、今日はそれがなかったことがよかった」。
この夜はバックネットに当たる風がはね返ってくる「逆風」だった。このZOZOマリン名物を「追い風」に変えた。「低く押さえつけて投げると球が浮くんです」。進行方向へ時計回りに回転するストレートはアゲインストの風で浮力を得る。低くボール気味に投げた直球が、ことごとくストライクゾーンへとホップした。3回二死二塁から実に19打者連続アウト。27アウトの約半分に当たる13アウトが、フライだった。
背番号18の生み出したリズムは打線を刺激した。1対0の3回二死満塁では新加入の
レアードが
東浜巨から満塁弾を放ち、「グランドスラムは3年ぶりだね」。チームはここから4連勝とし、息を吹き返した。
涌井はその後、不調で3勝7敗、防御率4.50とプロで最も屈辱的なシーズンを過ごしたが、あの日の投球がなければ143試合目までCS争いを繰り広げたチームの粘りもなかったかもしれない。
写真=BBM