
固くなったマウンドに、最後まで対応し切れなかった吉見一起
かつてのエースは、背水の覚悟で来季の復権を期す。今季は5試合の登板で、たった1勝(1敗)に終わった。吉見一起は「ダメなら終わりくらいの気持ちで」と悲壮な覚悟を口にする。
精密機械のようなコントロールを武器に白星を積み上げてきたが、今季苦められたのは固くなった本拠地・ナゴヤドームのマウンド。下半身の粘りを生かして投球する吉見には、反発力が増す固い足元は明らかな逆風となった。
対応できなければ、このままで終わってしまう。シーズンが終了すると、「考え方を180度変えるような感じ」と、上半身を強く意識するフォーム作りに取り組んだ。ただ、「上半身だけだと、体が元気なときは良い。元気がないときはダメなんです」。一度は取り組んだはずの上半身主導を見直し、再び下半身主導とした。
一見、回り道したかに見える。しかし、吉見は前を向く。試行錯誤している間に、ステップする左足ではなく、軸足の右足に着眼した。秋季キャンプは免除されていたが、ナゴヤ球場組とほとんど同じ日程で汗を流した。その右足には、まるで漫画『
巨人の星』の“大リーグボール養成ギプス”のようなものが、よく付けられていた。右足から体重移動をしっかりして、ボールに力を伝えるため。ようやく見えてきたものだった。
「固いところからパワーをもらって、指先に力を伝えることができつつある。それを習慣づけていきたい」
2020年シーズンの反攻へ、光が差してきた。
写真=BBM