
できることを地道に続ける
エースは、どこまでも貪欲だった。久米島キャンプ第2クールのある日。練習を終えた
則本昂大は、あるカメラマンが撮影した自らのブルペンでの投球練習中の連続写真を真剣な表情で見つめていた。
確認していたのはボールをリリースする直前の「骨盤の角度」。本人は笑って詳細な説明をしなかったが、一緒に写真を見ていた星洋介トレーナーに聞くと「骨盤が正しい角度と傾きにないと、例えば背中が反り過ぎていたり、体が早く開いていたりする。骨盤が理想とする角度と傾きにあれば、理想的なフォームになる。この数年、こだわってやってきた部分です」と教えてくれた。
久米島キャンプ中、球団はビデオカメラはもちろん、さまざまな動作解析ソフトを用意し投球フォームを分析。則本昂もデータをフル活用してきた。それでも静止画までチェックしようというその姿勢に、並々ならぬ決意を感じた。
右ヒジの手術に踏み切った昨季は12試合に登板し5勝5敗。今季はまさに先発陣の柱にふさわしい活躍が期待されている。巻き返しに向け「20勝とリーグ優勝」を目標に掲げた右腕。今年から新球ナックルカーブの習得に取り組むのも、その目標を実現するためだ。
チームは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で3月下旬から活動休止。練習場所も限られる中「家でストレッチをしたり、河川敷でランニング」など基本的には毎日、体を動かしている。「心身の調整は難しい部分もありますが、なるようにしかならないと思っています」。則本昂なら、たとえどんな環境にあっても心配は無用だろう。
写真=BBM