
アグレッシブな走塁、守備でも強烈なインパクトを残した
前評判の高さを、たった1試合で証明してみせた。オープン戦と練習試合で計7本塁打を放ち、注目を集めていた新外国人
オースティン。右ヒジの張りで開幕カードは代打に回ったが、6月23日の
中日戦(横浜)に「三番・右翼」で初先発すると4打数4安打1打点の活躍で3対0の快勝に貢献した。
まず1回に中日・
柳裕也から来日初安打。速球を詰まりながら中前へ転がすパワーを見せると、3回は変化球を引きつけて右前に運ぶ技術を披露した。5回は好機で先制適時打を放って勝負強さも示した。来日初のお立ち台で「毎打席、チームの勝利に貢献することだけを考えている」とクールに振り返ったが、興奮を隠せないのは
ラミレス監督だ。外国人選手としてNPB唯一の通算2000安打を誇る指揮官をして「日本で今まで多くの選手を見てきたが、一番のインパクトがある。日本で長いキャリアを送る能力がある」と手放しで褒めた。
オースティン劇場は打席にとどまらなかった。3回は佐野の二塁打で一気に本塁を狙い、5回もロペスの右前打で三塁をうかがった。どちらも好返球に阻まれたが、チーム随一といえる積極走塁は外国人選手に多い緩慢さとまるで無縁。3点リードがありながら、9回の守備では右翼フェンス際への飛球に恐れずダイビングキャッチを試みた。メジャー・リーグの名門ヤンキースで育った犠牲精神、忠誠心がプレーの端々ににじみ出ている。
NHKが夜のスポーツニュースで開幕早々に取り上げるなど、すでに扱いは並の新外国人選手を超えている。登録抹消となった右手人さし指の故障も軽度で済み、チーム逆襲のキーマンになりそうだ。
写真=榎本郁也