
バスターホームランを放った荒木
ここぞの場面で、仕事をする。難しい役割を、
荒木貴裕は任されている。プロ11年目の今季は主に代打で起用され、チームに勝利を呼び込む一打を放ってきた。
9月25日の
阪神戦(神宮)の7回無死一塁。1点リードで迎えた終盤、何としても次の1点が欲しい場面で代打として打席に立った。1球目はバントの構えで見送り、2球目だ。同様の構えから強打に切り替えるバスターで、左翼席への1号2ラン。好機を広げるどころか、勝利を大きくたぐり寄せる一発に、ナインも驚きの表情を浮かべた。
「サードがすごく前に来ていたのが見えたので、三遊間にしっかり転がそうと思ったら、(スタンドに)入っちゃいました。びっくりですね。追加点になってよかったですけど、全員びっくりしたと思います」
仰天アーチの裏には、多くの悔しさがあった。開幕一軍入りを果たすも、結果が出ずに二軍生活も経験。若手選手も増え、7月に33歳を迎えた荒木も必死にもがいた。「心は何回も折れたので、折れるものはなくなりました」。不振を脱するために、近道はない。「できることをコツコツやってきて、よくなってきた」とみずから打開策を模索した。
たどり着いたのは、「シンプル」だ。代打で対戦するのは、「勝利の方程式」を担う投手ばかり。打つのは容易ではない。さらに1打席勝負で、研究もされている。「考え過ぎていた部分があった。今はシンプルに自分のスイングをできるように心掛けている」。努力と思考の整理が、大事な場面での一撃を生む。
「最後の1試合まで全力で、一つでも上の順位にいけるように頑張りたい」。最下位に沈むが、どん欲に勝利を求め、バットを振る。
写真=BBM