
自身初となるリーグ優勝の“胴上げ投手”となった森
初めての瞬間は近そうで、なかなかたどり着かなかった。優勝マジック2で迎えた10月27日、本拠地・PayPayドームでの
ロッテ戦。5点リードだったが9回のマウンドに上がったのは守護神・
森唯斗だった。粘られた。1点を失い、なお二死満塁。打席に迎えたのは昨季までの同僚・
福田秀平だった。スタンドから降り注ぐ拍手。最後はフォークで二ゴロに仕留め、二塁手・
周東佑京がベースを踏んで試合が終わった。初めてのリーグV胴上げ投手。今季最多39球を投げ、優勝監督インタビュー中に
工藤公康監督から「投げ過ぎ」とダメ出しされて正座したのも、どこか森らしかった。
オフに1億8000万円アップの年俸4億6000万円(金額は推定)プラス出来高払いの4年契約でサイン。栄誉と等分か、それ以上の重圧も「やればやるだけ評価される。結果で示したい」と意気に感じて、今年も投げに投げた。チームの快進撃のさなか、10月11日には通算100セーブを達成。史上最速プロ7年目での100ホールド&100セーブ。「この世界はやるか……、やるしかない」。そんな矜持どおりの、史上6人目の大記録だった。
徳島・海部高から三菱自動車倉敷オーシャンズを経て2014年ドラフト2位で入団。「プロになれると思っていなかったから、どこまでも突っ走れる」のが強みだ。漁師を父に持つ右腕は「僕は止まったら死んでしまうマグロ。ずっと泳ぎ続けたい」とひたすらに投げてきた。
戦いは、なおも続く。「目標だったリーグ優勝ができて本当にうれしい。CS(クライマックスシリーズ)と日本シリーズに向け、今日みたいな投球をしないように準備をしたい」。胴上げ投手の記録は甘美なものではなく、森を次へと駆り立てるスパイスになった。
写真=佐藤真一