
10月15日のオリックス戦(京セラドーム)、代打満塁ホームランを放った長谷川
松田宣浩を外し、
内川聖一に犠打を命じてきた「短期決戦の鬼」がスイッチを入れた。ここから先は一戦必勝。
工藤公康監督のタクトの動きが、無言でそう告げた。10月15日のオリックス戦(京セラドーム)、同点にされた直後の6回表。無死一、二塁となると、五番・松田宣に代打を告げた。送り込んだのは
川瀬晃。サインは送りバントだった。
日本一は続いていても、過去2年はリーグ2位。「追い付かれたんで、何としてもあの回で点を、という思いがあった」。数倍増しのプレッシャーの中、川瀬は3球目を投前に転がし、送りバント成功。一死二、三塁から
中村晃の適時打で1点を勝ち越した。
ここで一息つかないのが工藤流だ。なおも満塁でオリックスが左腕・
田嶋大樹から
比嘉幹貴にスイッチすると、
バレンティンに代打・
長谷川勇也を
コール。助っ人大砲を迷いなく下げた。ベテランはこの場面で勝負球のシンカーを一閃。右翼席へ今季1号、プロ14年目で初の満塁弾にしてみせた。コロナ感染に翻ろうされた長谷川。離脱で約1カ月の実戦空白を強いられながら、ここぞの場面で起用に応えた。「さすが」。工藤監督はたたえ、どこか納得ずくだった。
かねてラストスパートのタイミングを「残り20試合」とした。この日がちょうど残り20試合のところ。まさに有言実行だった。この15日前の9月末日、2位・
ロッテにゲーム差ゼロ。勝率1厘差に迫られて迎えた翌戦で、無双のセットアッパーのL.
モイネロに回またぎを命じた。これはポストシーズンを除いて今季唯一のことだった。
緩急の手綱さばきを心得た指揮官のもと、チームはこの後、記録的な連勝劇とともにゴールへ転がり込んでいくことになる。
写真=宮原和也