
リーグV奪回、4年連続の日本一を成し遂げもなお、さらなる高みを目指す工藤監督 [C]SoftBank HAWKS
強さの理由がうかがえる一幕だった。2年連続で
巨人に4連勝し、日本一に輝いた翌日の11月26日。朝から
工藤公康監督の姿が本拠地・PayPayドームにあった。目的は、一軍全コーチとの個人面談。半日前の祝勝会ではナインに「しっかり休んで」と言っておいて、自身は早々と新シーズンへの準備に取り掛かっていた。
各コーチとの議論内容は、オフの選手個々の課題。「ゆっくりさせてあげたいと思いながら、課題も作っていかなきゃいけない」と頭まで休めるつもりはない。その翌日はコンディショニング担当やトレーナーと面談した。課題はトレーニングメニューという方法論に落とし込み、球団から個々に支給されているiPadに送り届ける。
通常11月は秋季キャンプの時期。例年はそこまでに見えた課題をもとに、各選手へオフの課題を渡すが、コロナ禍で開幕が大幅にズレ込んだ2020年は秋季キャンプがなく、約2カ月のオフを経て21年2月1日にキャンプインすることになる。異例のスケジュールだ。18年オフは走塁改革を掲げたが、今回は「個」の底上げにフォーカスを絞る。「チームとして常にスキのない野球をやっていきたい。チーム全体というより、こういうオフは個人の課題を出して、トレーニングにつなげてもらえれば」。
前日本代表監督の
小久保裕紀氏をヘッドコーチに迎えるなど、近い将来を見据えた組織の再編・強化も行われた。「僕は(投手出身で)野手目線は難しい。彼のアドバイスや考え方が選手に浸透して、よりレベルアップしてくれれば」。安閑とした様子はまるでない。正力松太郎賞は選手時代の1度を含め通算5度目で、
王貞治球団会長を超え史上最多に。吉報が届いたその日も、指揮官は筑後のファーム施設を視察に訪れていた。