
熾烈なレギュラー争いを制し、上林の“復活”はなるか!?
紅白戦から最終日の練習試合まで、キャンプ地・宮崎で行われた実戦すべてで安打を放った。その勢いは帰福後も止まらず、10試合連続安打。若手が結果でアピールに至らない一方で、
上林誠知が連ねた快音のインパクトはなおさら大きい。「ダークホース」と言うと失礼に当たるだろうか。2017年に134試合に出場して一気に頭角を現すと、翌18年は全143試合に出場して22本塁打。レギュラーを張れるポテンシャルはすでに見せている。だがここ2年の上林の立場は、明らかに厳しかった。
19年4月、
ロッテ戦で右手の甲に受けた死球から歯車は狂っていった。当初は打撲の診断で、試合にも出続けていたが、1カ月後に薬指の剝離骨折が判明。そこから約1カ月で戦列復帰は果たし、99試合出場で11本塁打を放ったものの、打率は.194に沈んだ。
開幕戦にスタメンで名を連ねた20年も調子は上がらず、中盤からは代走・守備要員での起用が主に。9月半ばに再調整を命じられ、リーグ優勝の輪には加われなかった。出場69試合(120試合制)、打率.181。オフの契約更改の席では「完璧主義な面があって自分を苦しめる。自分に優しくなりたい」と漏らすほど、悩みは深かった。
オフは初めてMLB・レッズの
秋山翔吾の下で自主トレ。広角に、低いライナー性の打球を打つイメージを養ってきた。今春キャンプでは
小久保裕紀ヘッドコーチから下半身、特に軸足になる左ヒザの使い方を教わった。「見逃し方が良くなっているし、逆方向にも強い打球が打てている」。キャンプ中の特打で打撃投手役を買って出た
工藤公康監督も、変化を見てとっている。「自分の力が素直に出せている。過去以上のものを出せたらいい」。変な力みもないが、言葉は確かに力強くなっている。
写真=湯浅芳昭