
開幕カードで2本塁打と好スタートを切った森
間違いなく、昨季チームで一番悔しい思いをしたのは、ほかでもない、
森友哉だろう。2019年、正捕手として135試合に出場し、自身キャリア最多の23本塁打、105打点、打率.329の大活躍で首位打者を獲得。パ・リーグのMVPに輝いた男が、昨季は9本塁打、38打点、打率.251と大失速したのである。その打撃不振が影響し、「打撃と守備は別」と切り替えられていたはずが、守備面でも精彩を欠き、攻守にわたって苦悩に満ちたシーズンを過ごした。言わずもがな、今季のリベンジへの思いは並々ならぬものがある。
思いの強さは、オープン戦からしっかりと結果で証明してきた。全14試合に出場し、打率.359。昨季、「ここまでわけが分からんくなるとは」と開幕からシーズン通して修正できなかった打撃の感覚を取り戻した。森の真骨頂であるフルスイングも完全復活。3月12日の
阪神戦(甲子園)では、高校時代バッテリーを組んでいた1年先輩・
藤浪晋太郎との対戦が注目される中、第1打席で左越え二適時打を放ち千両役者ぶりを発揮した。
守備面でも、キャンプ中は
牧野翔矢、
中熊大智の一軍未出場組とともに基礎練習に取り組む時間も多く、あらためて基本技術を磨いた。また、実戦では、盗塁阻止も目立ち、送球の安定感が増した印象もある。本格的に正捕手となって4年目。グラウンド上の監督として、何事にも動じず、揺るぎなき信頼感を勝ち取りたい。
3月26日、
オリックスとの開幕戦(メットライフ)では3回、一死走者なしで
山本由伸が投じたカットボールを右翼席へ今季第1号本塁打。ヒザ下に鋭く食い込む1球を巧みにさばいた一発だったが、
辻発彦監督も「天才的」と驚嘆した。28日の同カードでも初回一死二塁で
山岡泰輔の内角高め145キロ直球を振り抜くと、打球は右翼席へ飛び込んだ。辻監督は再び「難しいところを打つのが得意なバッターだ」と、その打撃をほめ称えた。
甲子園優勝、2年連続オールスターMVP獲得など、舞台が大きくなればなるほど、期待が高まれば高まるほど輝きを放つのが森友哉という男だ。自身、そしてチームの雪辱を固く誓う背番号「10」の“汚名返上劇”はすでに始まっている。
写真=BBM