左腕・小島和哉は涙をこぼした。10月12日の
オリックス戦(京セラドーム)。8回まで2点リードしていながら、
宗佑磨に同点2ランを浴びた。
「自分が抑えていれば勝てた試合」
試合は引き分けだった。負けなかったが、優勝を争うライバルとの直接対決の意味を背負っていたからこその涙だった。
この涙を周囲は見ていた。そして、誰もが奮起した。翌13日に先発した
石川歩は「自分もいい投球をしたい」と燃え、さらに翌14日に先発した2年目・
佐々木朗希は「小島さん、石川さんがいい投球をして、その流れに乗せてもらった」と振り返る。
小島の熱投が、石川、佐々木朗の好投を引き出し、そして引き分けのあとの連勝を呼んだ。プロ3年目にして、自身初の2ケタ勝利をマークした小島の存在感は、仲間たちへ大きな影響を与えるようになっている。
左腕エースと言っていいだろう。9月11日の
楽天戦(ZOZOマリン)、1失点でプロ初完投すると「ちょっと出来すぎなところもある」と振り返ったが、その後の投球はさらに圧巻だった。同19日の
日本ハム戦(札幌ドーム)ではプロ初完封。さらに、10月2日の楽天戦(楽天生命パーク)でも自身2度目の完封をマークした。
この期間、4試合で3完投、2完封である。小島は「ストライクゾーンで勝負するようにしている」と打ち明ける。かわす投球でなく、攻める投球で新たな新境地を開いた。こんな投球ができるのだから、首脳陣、ナイン、ファンからの信頼も増すばかりだ。
写真=BBM