
シーズン終盤の9月に一軍デビューしたリチャード。限られた試合の中で2カ月で7本塁打をマークした
プロ入りは2018年、育成3位での入団だった。同2位の
周東佑京が2年目で頭角を現し、侍ジャパンにも選ばれた一方で、リチャードは地道に下積みを重ねてきた。
初めは三軍が主戦場。2年目のオフ、台湾で行われたウインター・リーグで飛躍のきっかけをつかみ、3年目の開幕前に支配下登録された。二軍で本塁打王にはなったが、一軍デビューはお預け。迎えた4年目の今季も開幕から二軍暮らしだったが、シーズン終盤の2カ月でプロ初本塁打を含む7本塁打。チームが8年ぶりのBクラスとなる4位に沈んだ中、ブレークへの扉を開き、数少ない明るい話題となった。
ベテラン・
松田宣浩も38歳を迎え、リチャードは貴重な右の大砲として来季さらなる飛躍が期待される。
工藤公康監督が退き、
藤本博史新監督の下で滑り出しとなった秋季キャンプでは、いわゆる「強化指定選手」の扱い。
小久保裕紀二軍監督からは「あいつには『来季はもう俺の顔を見ない1年にしろ』と言いたい」とハッパをかけられた。(1)人よりも早く動く(2)メモを取る(3)全力疾走を最後まで続ける、そんな3つの約束とともに――。
身長189センチ、体重119キロの巨漢。小久保二軍監督も「俺もこの体(身長180センチ、体重87キロ)で飛ばそうとだいぶ努力したけど、そんな努力をせんでもあんだけ飛ばせる」と目を見張る。ファンの期待も膨らむばかりだ。一軍での実働期間から言っても契約更改で爆発的な昇給とはいかないかもしれないが、グラフが急上昇に転じるのは間違いない。今後の“成り上がり”を語る上で、欠かせないオフになりそうだ。
写真=湯浅芳昭