
ルーキーイヤーのような躍動感ある投球が戻ってきた
あっという間の完封劇だった。4月16日の
ヤクルト戦(横浜)。
上茶谷大河はわずか91球で27個のアウトを積み上げ、100球未満でのシャットアウトを指す「マダックス」を達成した。お立ち台で「最高です!」と叫ぶほど会心の投球だった自身初の無四球完封勝利は緻密なコントロールと大胆な攻めがあってこそ成せる技だった。
今春のキャンプから
三浦大輔監督は投手陣に「3球で追い込む」ことをテーマとして求めてきた。この試合の投球はまさにそれを体現。簡単に投手有利のカウントに持ち込み、相手に考える時間を与えずに凡打に仕留めていった。
有効だったのは今年から持ち球に加えたシュートだった。オープン戦では思うように扱えず、打ち込まれる試合も目立ったが、そのたびに三浦監督から「ここでやめるなよ」と新球習得を諦めないよう諭された。時間はかかったが、シーズンに入って精度は向上。右打者は懐をえぐられたことで、外角球がより遠く感じる。両サイドを広く使い、相手に狙いを絞らせなかった。
ドラフト1位で入団した2019年は7勝を挙げたが、その後は2勝、1勝と右肩下がり。4年目の今季は東洋大時代の投球フォームに戻した。プロ入り後は故障のリスクが低いフォームを求めていたが「ケガをせず0勝で終わるか、ケガをしやすいフォームで勝つか。僕はリスクを選ぶ」と覚悟を決めて臨むシーズン。2年ぶりの完封勝利をつかんだこの日は、かつての自分を超える輝きを放っていた。
写真=大賀章好