
3年ぶりのAクラス入りにエース左腕の存在は欠かせない
鉄仮面は崩れなかった。
今永昇太はまだ、戦っている様子だった。「ここは僕たちのホーム(本拠地)ではないので、あまり大喜びしても……」。6月7日の
日本ハム戦(札幌ドーム)で達成したノーヒットノーラン。プロ野球85人目、球団では52年ぶり、
DeNAとしては初、そして敵地・札幌ドームでも初めての偉業だった。9回をわずか1四球、28人斬りの準完全試合。最後のアウトを取っても表情は変えず、相手を気遣うように控えめなハイタッチにとどめた。
「本当に勝たなきゃいけない。他を圧倒するような投球、成績を残す年にしないといけない」。一昨年10月に受けた左肩のクリーニング手術を乗り越え、昨年は2年連続の5勝。復活過程で手応えをつかみ、今季へ懸ける意気込みは相当だった。しかし、2月のキャンプ中に左前腕炎症で離脱。「チームを離れないこと」を大前提としただけに、痛恨のアクシデントだった。一軍復帰は5月6日の
広島戦(マツダ広島)。ここまで10試合で4勝2敗、防御率2.88の仕事ぶりだが、大黒柱にとって満足できる成績ではないはずだ。
首位・
ヤクルトの独走を許しているものの、チームは勝率5割前後で奮闘。先発陣も
大貫晋一、
濱口遥大、
石田健大、
ロメロと駒がそろいつつあり、
東克樹や
上茶谷大河も新型コロナ陽性判定から復帰を目指している。今永自身も日本ハム戦から2連敗を喫したが、7月1日のヤクルト戦(神宮)で通算50勝をクリア。勝負所となる9月に29歳を迎える背番号21。絶対軸として投げ抜く。
写真=牛島寿人