
円熟味が増している
その姿は1987年生まれのベテランとは思えなかった。22年シーズン、35歳の
炭谷銀仁朗はウサギのように軽やかなプレーを見せた。首脳陣はもちろん、
岸孝之、
田中将大ら投手陣からの信頼も厚く正捕手として98試合に出場した。
打率.237、18打点。4本塁打。
太田光ら若手捕手と比べても、遜色のない結果を残した。契約更改交渉では500万円アップの1億円でサイン(金額は推定)。「今年1年こうやって戦えて、体も問題ないことを僕の中で再確認できた。もう35歳になったけど、もう一度、自信を取り戻せた」と充実感をにじませた。
36歳を迎える23年シーズン。年男の決意は、ほかのどの選手と比べても固い。言葉の端々から燃えるような闘志を感じた。ライバルであるはずの若手に対し「若手にも、もっとハングリーさを持ってほしい」と要望した上で「それによって、ベテランだけど『譲ってたまるか』となるし。負ける気はない。負けたくない」と力強く言い切った。
正捕手の座は譲るつもりはない。誰にも負けたくないという自尊心の裏に、チームを思う気持ちも見え隠れする。「(
楽天は)何回も優勝したチームではないですけれど、これからどんどん強くなるために、常にAクラスにいられるチームになれるように」と、チームの将来を思う気持ちもある。
経験豊富な年男は、若手が自らを脅かす存在へと成長することを心から望んでいる。激しい競争を続けることがチーム力の底上げになると信じ、高い壁であり続ける。
写真=BBM