
2年目の進化を求めてオフは心技体を鍛え上げた
1年目を振り返って「実績を残した感覚はないです」と、
北山亘基は言った。周囲の見立てと反して、真剣な表情で現在地を語った。
激動のルーキーイヤーだった。二軍スタートだった春季キャンプ第1クールで初速と終速の差が少ない、150キロ超の伸びる真っすぐが
新庄剛志監督に見初められた。すぐに一軍昇格。実戦でも結果と信頼を積み上げ、球団の新人投手では66年ぶり2人目となる開幕投手に大抜てきされた。その後はセットアッパーにクローザーとフル回転。シーズン最終戦では最終9回を託されてセーブを挙げた。シーズン開幕の“オープナー”に終幕の“クローザー”を務めてチーム最多の55試合に登板。それでも北山本人は、実績を残してはいないと捉えて満足感はなかった。
「去年は“優勝しない”っていうシーズンで経験させてもらっただけなので。今年は“優勝する”って言っている中で、勝利に貢献する55試合を投げられるかというと、去年のままでは絶対無理なのでまったく満足してない。逆に危機感を持っています」
進化を求めたオフは単身渡米して「ドライブライン」で動作解析を行い、投球フォームにおける下半身の連動部分の改良を科学的にアプローチ。また、神奈川にある禅寺で座禅を通して“無の境地”を勉強。どんな状況にも左右されない地力の強さを鍛える、精神的なアプローチにも取り組んだ。すべてはチームの期待が投影された貴重な経験から導き出された、成長への余地を埋めていく大事な作業。今季は優勝へ導くフル回転で納得の“実績”を残す。
写真=BBM