コーチとして実績十分ではあったが、「監督業は素人」。2023年の監督就任は新たな挑戦でもあった。吉井理人監督は就任1年目でチームを2年ぶりのAクラスとなる2位にけん引。歓喜の瞬間を目前で見たチームにとって、次に目指すべきなのは頂点しかない。
23年のチーム成績は防御率3.40がリーグ5位、打率.239は同4位。投打に課題を残したが、「良いところはたくさんあった。そこを伸ばすことを考える」と長所に目を向ける。
前半は快調だったチームの後半の失速の原因に挙げたのは、先発陣の駒不足。規定投球回に到達したのは小島のみ。佐々木朗が離脱して以降、8月は11勝15敗1分けと負け越し、9月は月間で一度も連勝がなかった。クライマックスシリーズ(CS)を含めて救援陣でつなぐブルペンデーを5度決行したことにも、台所事情の苦しさが映る。
「どんなに選手を大事に使っても、いつかへばると思った。シーズンで勝ち抜くのは難しい」
すでに中森やベテランの唐川がローテ入りに意欲を見せ、先発陣の再構築を目指す。
野手陣は中村奨を三塁、藤岡を二塁に挑戦させるなど内野のコンバートを決断。自身も「打撃の仕組みをまったく知らなかった」と振り返り、専門外だった野手の勉強にも力を注ぐ。アナリストに手を借りて研究。オフも休まずに動いている。
23年に優勝した
オリックスとは15.5ゲーム差。CSでも力の差を見せられた。「負けを繰り返したくない。チームのイメージ、雰囲気を変えたい」。指揮官は熱く燃えている。
写真=桜井ひとし