「全国準優勝」で得た実りと収穫の秋

神宮大会決勝では近畿地区王者・履正社高に打撃戦の末に敗れた[6対11]ものの、堂々の準優勝。三番で主将・清宮[前列左から4人目]と1年生四番・野村[同2人目]は全国屈指の破壊力の持ち主/写真=大賀章好
希代のスラッガー・
清宮幸太郎を主将に据え、今秋の新チームをスタートさせた早実。リーダー自ら考えたというチームスローガンが「GO!GO!GO!」だ。
「夏の西東京大会準々決勝で八王子に敗れたときから、自分たちに何が足りないかを考えて、スピードや飛距離で力負けしないことが大事だと思いました。そこで、投手は球速5キロアップ。打者は飛距離5メートルアップ。そして全員が体重を5キロ増やす目標を立て、普段から使いやすいように『5』を『GO!』に置き換えました」
このスローガンのもとで練習に励む一方、和泉実監督は打線に対して選球眼への意識を高めさせた。「選球眼といっても、同じストライクでも甘い球と厳しい球がありますから、その打席のなかで打つべき球をしっかりと選んでスイングするように徹底させています」。この指示が結果につながり、早実打線は秋季東京大会で爆発。8戦90得点、全試合で7点以上を奪い見事、優勝を果たした。
明治神宮大会でも順調に勝ち上がっていく。日大三高との東京大会決勝で左腕から5打席連続三振を喫した清宮も、静岡高との初戦で、課題のサウスポーから2安打。7回には「詰まっていたが思ったよりも伸びた」という打球がライトフェンスを直撃し、勝ち越し点のきっかけとなった。しかし、清宮自身が、状態が良くなっていると感じたのは3回に受けた死球だ。
「日大三高戦では、かかとに重心がかかっていたのでフォームを修正してきました。死球は内角の真っすぐにのけぞることなく、肩を開かずにボールを見られたので、良い傾向だったと思います」
福岡大大濠高との準決勝では、三番・清宮は勝負してもらえず4四死球だったが、今夏から不動の四番・1年生・
野村大樹が「清宮さんが出塁したときは気合が入ります」と、3安打4打点。清宮の1年終了時を上回る、高校通算23号本塁打も放った。好調の要因を「同級生の板谷竜太とフォームの悪いところを指摘しあっているからだと思います」と野村。試合前には1年生が集まり食事に行き、結束を高めているという。
秋時点ですでに備わる劣勢を跳ね返す力
だが、履正社高(大阪)との決勝では清宮の先制アーチ(高校通算76号)も実らず逆転負け(6対11)。準優勝の和泉監督は「エースの中川広渡(1年)が大会前に体調を崩し、そこに甘さがあると感じました。この冬は体力面を鍛えて精神的なスタミナもつけさせたい」と課題を挙げ、「中川に限らず、長いイニングを投げられる投手が出てきてほしい」と、投手陣全体に奮起をうながした。
ただ、「このチームには劣勢を受け止める力があるんです。主将の清宮が先頭に立ってチームを鼓舞し、最後まであきらめない雰囲気が秋の時点ですでにあるので、来春にもつながっていくと思う」と、期待の大きさも口に。また、清宮は「勝った試合よりも負けた試合のほうが得るものがあるので、チーム全体で成長のきっかけにし、この冬は体重5キロアップに取り組みたい」と、抱負を語った。エース・
王貞治を擁した1957年以来、センバツでは60年ぶりの甲子園制覇を狙う早実。スーパースターの系譜が世紀を越えてつながるのか、注目だ。(取材・文=大平明)