脚力自慢のスピードスター候補

中大野球部合宿所[八王子市]に入寮した五十幡。中学時代に「サニブラウンに勝った男」として知られる/写真=(P)URP
「サニブラウンに勝った男」が「東都のスピードスター」を目指す。
佐野日大高・
五十幡亮汰が1月31日、中大野球部合宿所に入寮した。新1年生は緊張した面持ちで言った。
「やっと大学生活が始まるんだなという感じですが、不安も多いです。自分の持ち味である足を生かせないとチームの役に立てないので、まずはそこをアピールしたい」
2007年以来の監督復帰となる中大・
清水達也監督(昨秋までコーチ)も「早く大学野球に慣れて、戦力になってほしい」と期待する。
100メートルの自己ベストは10秒79。中3のとき、全日本中学陸上競技選手権で100メートルと200メートルを制した。そのレースで、のちに日本代表として2015年の世界陸上に出場するサニブラウン・アブデル・ハキーム選手に勝っている。ただ、五十幡はこの話題に顔を少し曇らせる。
「サニブラウンに勝った男として知っていただいているのはうれしいのですが、悔しさもあります。高校時代に野球で活躍できなかったので、今でも『陸上の五十幡』と言われる。このまま終わるのは……。野球で取り上げられるようになりたいです」
小学生のころから走ることが好きだった。中学時代に東京神宮シニアで野球をしながら、学校の陸上部に入ったのは「野球のためになれば」と思ったから。だから、高校で野球一本に絞ることに迷いはなかった。
「陸上は個人競技だけど、野球はチームプレー。みんなで喜んだり、悔しがったりできるのがいいところで、好きなところ。(陸上競技で実績を挙げても)プロ野球選手を目指したいという夢は変わらない」
盗塁記録更新を目指すため、まずはレギュラー奪取
高校時代は自分の陸上での実績が重圧となった。試合では、一塁に出ると5球続けてけん制されたこともあるほど警戒されたという。
「走らないといけない。でも、アウトになってはいけないと思うと、なかなかスタートが切れなかった」と明かす。
短距離走のスタート時に体を沈み込ませるフォームは、野球では欠点となった。佐野日大高・松本弘司監督から「内野手の動きは走塁につながる」と勧められ、2年冬に外野手から遊撃手に転向。松本監督の狙いどおり、スタートの姿勢は改善できた。
それでも五十幡は「まだ盗塁のスタートは苦手」と言う。ピストルの音で駆け出すのは得意だが、盗塁となると、相手バッテリーとの駆け引きが求められるため難しい。「まだまだ勉強しないといけない」と、昨季で引退した代走のスペシャリスト・
鈴木尚広(元
巨人)の動画などを見て研究している。
「走塁の技術を磨いていきたい。スタートが完璧にできれば、足はプロでも通用すると思う。もちろん出塁できないと足を生かせないので、打撃につながる体作りをしっかりやって、4年間でドラフトで指名されるような選手になりたい」
大学では外野手としてプレーすることを希望している。東都大学リーグの通算盗塁記録は駒大・
野村謙二郎(元
広島)が持つ52。その更新に期待がかかる。だが、五十幡は「まずは一日でも早く試合に出させてもらえるように頑張りたい」と、足元を見つめながら大学生活のスタートを切った。(取材・文=佐伯要)
PROFILE いそばた・りょうた●1998年11月27日生まれ。埼玉県出身。172cm64kg。右投左打。東小1年から行田東フェ
ニックスで投手、遊撃手として野球を始める。長野中では陸上競技部に所属しながら東京神宮シニアで外野手としてプレー。U‐15アジアチャレンジマッチ出場。陸上では中3時に全日本中学陸上競技選手権の100メートル、200メートルの2冠。佐野日大高では1年夏から外野手のレギュラーで、2年冬からは遊撃手。3年夏の栃木県大会は3回戦で敗退している。