
昨年の新チーム結成時、主将・中川圭太[4年・PL学園高]から副将に指名されるなど、人望が厚い。誰もが「梅津を勝たせたい」と初勝利を願っている/写真=矢野寿明
リーグ戦未勝利のドラフト1位候補
「勝たせてやりたい投手」。153キロ右腕・
梅津晃大(4年・仙台育英高)は、周りの誰もがそう思う存在だ。なぜならば、これまでの副将としての言動を見てきているからだ。
梅津は1年夏に突然、投球が10球に1球ほどすっぽ抜けるようになった。その不安から、球が投げられない時期もあった。東洋大OBの
玉井信博投手コーチ(元
巨人ほか)の指導で近距離のスナップスローを繰り返すなど、地道な練習の末に3年春には投げ込みができるまでになった。3年秋には開幕の日大1回戦で一部リーグ戦初登板を果たす。ところが、国学院大2回戦で6回途中に右足の内転筋を痛めて降板。以降はベンチを外れ、4試合で0勝1敗、防御率2.70という成績で同秋を終えた。
昨年11月の明治神宮大会後、主将となった中川圭太(4年・PL学園高)は梅津を副将に指名している。梅津は「実績がない自分には説得力がない」と驚いたという。中川はその理由を「梅津は苦しんでいるときも折れずに、何としてもチームを勝たせようと取り組んできた。仲間のために発言もしてくれる」と明かす。
4年春は開幕の中大2回戦で7回1失点(自責点0)と好投したが、リーグ戦初勝利はならなかった。その後、空き週に実施したオープン戦で打球を左足の内くるぶしに受け、戦列を離れた。投手としてはチームを勝利に導くことはできなかった。だが、副将として嫌われ役に徹し、私生活の細かい部分を指摘し続けることで、リーグ3連覇に貢献した。
降板後に見せた象徴的なシーン
リーグ戦未勝利ながら、潜在能力の高さからドラフト1位候補として評価され、迎えた今秋。9月5日、開幕の立正大2回戦では5回無失点で勝利投手の権利を得て降板したが、その後にチームが一時逆転され、白星はつかなかった(3対2で勝利)。9月27日の中大2回戦では7回1失点で、勝ち負けはつかなかった(1対2で敗戦)。攻撃陣の後押しがあれば……と思いたくなる試合が続く。それでも、梅津は「自分がリズムを悪くして、打線が打ちづらい環境を作ってしまっている。1対0で勝てる投球をしたい」と自分を責める。
これまで度重なるアクシデントや不運にも、梅津は腐ることがなかった。中大2回戦では、そんな彼らしさが感じられるシーンがあった。0対1とリードされた状況で7回を投げ終えると、杉本泰彦監督から「お疲れ」と降板を告げられた。その裏の味方の攻撃が0点で終わったとき、梅津は「またか……。やっぱり初勝利は遠いな……」と感じたという。しかし、その後はすぐに前を向いた。「ここで休んでも、次にはつながらない」とブルペンに向かい、力のこもった球を投げ続けたのだ。
梅津の勝利への執念に、チームメートも応えようと必死だ。四番を打つ中川は「なかなか援護できていないのは申し訳ない。次こそは! という思いです」と力強く言う。
次の登板は、10月9日からの駒大戦が濃厚。「チームを勝たせたい」という梅津の思いと、「梅津を勝たせてやりたい」という仲間の思いは、必ず結実するはずだ。初のウイニングボールを手にする梅津の笑顔を、そして、誰よりも、周りが喜ぶ姿を見届けたい。(取材・文=佐伯要)
PROFILE うめつ・こうだい●1996年10月24日生まれ。宮城県出身。187cm92kg。右投右打。南小泉小2年から南小泉メッツで野球を始める。仙台育英秀光中では2、3年時に全国大会出場。仙台育英高では2年春のセンバツ出場も登板なし。同秋からエースで、3年夏は宮城大会4回戦敗退。東洋大では1年春から登板(二部)し、3年秋に一部デビューを果たす。