
JFE東日本は同じ南関東地区の日本製鉄かずさマジックに1点差で惜敗した[写真=菅原淳]
落合成紀監督(東海大)の下、「超攻撃野球」を掲げたJFE東日本(千葉市)が黒獅子旗を手中にしたのは2019年のこと。それから5年の月日が経ち、メンバーも入れ替わるなか、3年ぶりに東京ドームの舞台へ帰ってきた。「この3年間は基礎と土台づくりに費やしてきました。バッテリーを中心にした守りから、隙のない野球を目指してきたなかで、少しずつ形になってきたと感じています」(落合監督)。とはいえ、「超攻撃野球」を捨ててしまったわけではない。主将の内藤大樹(青学大)は言う。
「超攻撃野球と言っても、バッティングだけではないんです。守備でミスを恐れずにプレーすることも超攻撃野球ですから、ベースは変わっていません。そして、全国大会に出られなかったころはミスが出るとズルズルと引きずってしまったのですが、とにかく思い切ってプレーすることを普段の練習から心掛けたことで、チームに粘り強さが出てきたんです」
投手陣は宇賀神陸玖(富士大)と山田啓太(白鴎大)の両左腕が先発を務め、試合の後半は150キロを超えるストレートを持つ本定史好(上武大)が締めるというパターンを確立。都市対抗の南関東二次予選では宇賀神と山田が2試合ずつ先発し、2試合に救援した本定は通算で8回1/3を投げて無失点と安定感抜群だった。第3代表決定戦は、投げては宇賀神から本定への必勝リレー。打っては
猪田和希(神戸国際大付高)が3本目の本塁打を放ち、オールフロンティアを5対1で下して、本戦出場を決めた。
競った展開で勝ち切ること
本大会の初戦の相手は同じ南関東地区に所属する日本製鉄かずさマジック(君津市)。予選では第2代表決定戦で敗れている(0対6)ライバルだけに、負けられない一戦だった。試合は初回に四番・猪田が2ラン。2回裏には
宗接唯人(亜大)が勝ち越しソロ。さらに、同点の7回裏には代打の内藤主将がライトへ2ランを放って勝ち越した。だが、5回から登板した二番手の本定が9回表、2四球の後に二塁打を打たれて1点差となり降板。代わった林桂大(国際武道大)は打ち取った打球が内野安打になる不運が2度も続いて逆転。そのまま5対6で敗れた。
「今年は本定が頑張ってくれたので、彼で負けたのなら仕方がない」と落合監督。内藤主将は「19年に優勝したときは勝ちながらチームが成長していったので、何としても初戦は勝ちたかった。全国大会では必ず競った展開になるので、こういうゲームを勝ち切れるチームにならないと」と課題を挙げた。
落合監督は「投手は枚数を増やし、打者は一球で仕留められるようにレベルアップしていきたい」と話し、今後のキープレーヤーには入社2年目の
小松勇輝(東海大)を指名。全4打席で出塁した猪田の直後を打つ五番だったが「今日の試合ではタイムリーでもう一押しができず、黒星という結果になってしまった。もっと上を目指せる選手なので、一本立ちしてほしい」と期待を寄せた。
「超攻撃野球」に新たなエッセンスを加えようとしているJFE東日本。進化したスタイルが出来上がった暁には、再び黒獅子旗を手にするチャンスが訪れるはずだ。(取材・文=大平明)