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第95回都市対抗野球大会

東京ガス・松田孝仁監督 就任2年目で得た手応え 意思の疎通と信頼関係の構築

 

三菱重工Eastとの準決勝で敗退後、主将・笹川が3位の黄獅子旗を手にした[写真=矢野寿明]


「オレが悪かった」。東京ガスの今シーズンは松田孝仁監督(関大)が頭を下げることから始まった。

「シーズンオフに多くの選手と話をする機会を設け、1年を振り返って感じていたことをフィードバックしてもらいました。そのなかで言われたのが『監督との間に距離があってコミュニケーションが取りづらかった』という意見でした」

 松田監督は就任2年目。昨季は初めての監督業ということもあり「いろいろと考えながらやっていたのですが『監督として、こうあらなければいけない』という思いにとらわれてしまったところがあり、うまくいきませんでした」と振り返る。

 昨年の都市対抗ではJR四国(高松市)との1回戦を、延長11回タイブレークでサヨナラ負け(0対1)。1安打に抑えられた。そこで、まずはチームのルール作りから始めた。「選手からは『自分たちが主体となって活動していきたい』という意見が多かったので、最初は選手の考えに耳を傾ける。それから別のやり方もあるんじゃないかという提案をして、このチームにはどのやり方が良いのかを話し合いました」。

 笹川晃平主将(東洋大)は「昨シーズンは監督が代わって最初の年で、お互いに探り合っていたところがあったと思います。そんな中で松田監督から謝罪の言葉があり、最低限の変えたくないところはあるということでしたけれど、今シーズンは強化練習の内容など選手からアクションを起こすことが増えてやりやすくなりました」と意思の疎通ができた。

個性を発揮した準決勝進出


 今年の都市対抗の1回戦ではミキハウス(八尾市)と対戦。5対2とリードした9回裏に二死満塁のピンチを迎えたが逃げ切り。松田監督は「戦い方が大きく変わったわけではありませんが選手が頼もしく見えています。最後の場面もバッテリーを信じようと思えましたし、信じることで選手も応えてくれています」と、信頼関係も生まれている。2回戦はENEOS(横浜市)に2対0、準々決勝は明治安田(東京都)に6対2で勝ち上がったが、ここにも前年の経験が生きている。

「昨年は大会前のオープン戦の残り5試合くらいのところで投打ともにピークを迎え、本大会では思うような攻撃ができませんでした。でも、今年は試行錯誤して練習メニューを組んだことで、チームの状態が上がってきたところで大会に入れました」(松田監督)。

 選手も個性を発揮。2年目の中尾勇介(日大)は1回戦で軽くミートした打球がフェンス直撃の逆転打に。「ウエート・トレーニングは毎日やっていて、打球も飛ぶようになりました」。笹川主将は準々決勝で左翼へ本塁打を放ち「ホームランもあれば、犠打もする。必要なときに必要なことをするのが持ち味です」とハツラツとしたプレーを見せた。

 準決勝は黒獅子旗を手にした三菱重工East(横浜市)に1対4で敗れ「優勝するにはまだ勉強しなければいけないことがありますが、良く言えば、伸びしろがあるということなので選手と一緒に鍛え直していきたい。収穫のある大会でした」と松田監督。1年目の反省を2年目の飛躍につなげた。3年目の頂点へ、挑戦は続く。(取材・文=大平明)
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