
三菱重工Westの入社3年目・竹田が原動力となり、社会人日本選手権の近畿地区予選を勝ち上がった[写真=矢野寿明]
この秋は三菱重工Westにとっても、投手陣の柱である
竹田祐(明大)にとっても、今後を左右する重要なシーズンとなりそうだ。
竹田は履正社高のエースとして3年春のセンバツで準優勝。明大でも1年春から神宮のマウンドで躍動し、東京六大学通算11勝をマークした。4年時にプロ志望届を提出も、ドラフトでは名前が呼ばれず。三菱重工Westには2年後のドラフト指名という、強い決意を持って入社した。1年目から主戦として腕を振り、日本製鉄鹿島との都市対抗初戦では8回2失点の力投。社会人日本選手権では3試合19回1/3で防御率0.47と確固たる存在感を示した。
しかし、勝負の入社2年目に調子を崩した。「春先は良かったんですけど、夏前にガタっと落ちてしまって、何も分からないまま、都市対抗で敗退した感じでした。(原因は)あまり分からないんですけど、フォームのバランスが崩れたまま終わってしまいました。下半身が全然、使えてなかったので、そこかなと思います」。都市対抗ではJR東日本との1回戦で先発も、4回途中5失点で降板。社会人日本選手権では登板機会なく、チームは初戦敗退。ドラフト解禁年に再び、悔しさを味わった。
「大学4年生の時も、指名漏れを経験して2年で絶対、プロに行くと決めていたんですけどそれもダメで、何か変えないといけないなと思いました。ヘコむというより、そんな評価なんだなと思いました」
向上心の塊のような性格で普段からどうしたら良い球が投げられるが、どうしたらうまくなれるかを考えに考え抜いている。ストイックな右腕はオフ期間に徹底的に追い込んだ。下半身主導のフォームを見直し、大小さまざまな筋肉を鍛えた。
優れる再現性の高さ
雌伏の時を経て社会人3年目のシーズンに見事復活、いや進化を遂げた。王子との都市対抗1回戦では気迫の込もった投球で3失点完投勝利。ストレートの平均球速が140キロ台後半だった。大一番での快投以外にも年間通して安定した投球を続けており、再現性の高さ、ピンチでのメンタルなど総合力に優れる。過去最高の状態にありドラフトが近づいてもどんと構えて平常心で過ごす。「野球人生で一番、気持ちよく投げられています。大学4年と昨年は不安もあって、生活するのもしんどい感じだったんですけど、今年はしっかり投げられている」。
竹田の復調、進化に合わせてチームも好調だ。新加入の
北條史也(元
阪神)が勝負強い打撃で得点を生み出し、体のケアや練習に取り組む姿勢でも若手選手に好影響を与えている。投手陣も竹田を中心に層が厚い。2021年に
広島、神戸・高砂、名古屋、横浜の4つあった野球部を再編、統合し三菱重工Westとなってからは今年の都市対抗が初のベスト8入り。社会人日本選手権にも激戦続きだった予選を勝ち抜き、7大会連続28回目の出場を決めた。敗者復活戦に回ったパナソニックとの代表決定戦で、竹田は救援で最後を締め、1対0で逃げ切った。
津野祐貴監督は「今がチームの分岐点。全員でしっかり戦うことを目標に後ろから行く選手もしっかり活躍してほしいです。目の前の試合を全力で勝つことだけ考えてチーム一丸となって戦っていきたいと思います」と話す。全国上位常連の雰囲気を根づかせたい。(取材・文=小中翔太)