
今季からチームを指揮する井上監督は、ラストイヤーに懸ける思いが強い[写真=川口洋邦]
2026年の今シーズン限りで休部することを発表したパナソニック。都市対抗は57回の出場を誇り、日本選手権は43回出場して2000年と05年に優勝。
福本豊や
山口高志(ともに元阪急)といったプロ野球選手も多く輩出している古豪だ。社会人の名門チームが一区切りとなることを受け、球界内ではさまざまな波紋を呼んだ。
今季、ヘッドコーチから昇格した井上貴晴監督(青学大)は「この冬は走る量と振る量を増やしつつ、技術よりも気持ちの面。野球に取り組む姿勢やチームに対する姿勢を見つめなおしてきました」と振り返る。
松浦隆己主将(亜大)は言う。
「オープン戦の試合をするごとにグループミーティングをして課題を共有してきました。最後の1年になりますが、自分だけではなく副主将の
坂下翔馬(近大)と
本間颯太朗(慶大)や、ベテランの
法兼駿さん(亜大)がさまざまな角度からチームを見て引っ張ってくれているので、常に前向きにやっていこうという気運が高まっています」
二大大会優勝が目標
2月の薩摩おいどんリーグでは明治安田、東京ガス、Hondaから白星を挙げ「関東の強豪を相手にいろいろな攻撃を仕掛けて劣勢から逆転勝ちすることもあり、若い選手たちが成功経験を積むことができました」と井上監督は収穫を語った。
そして、今季のチームスローガンは「ALL IN〜その一球で共に喜びを〜」に設定している。「最後に勝って終わるためにすべてを懸ける。一球一球、真剣に取り組んで、真剣に勝負する。そして、応援してくださるすべての方々に感謝してプレーしていきたいです」(松浦主将)。
「注目される1年になりますが最初の大会なので、選手たちには『われわれらしくどんどんトライしていってくれ』と伝えました」(井上監督)と、3月にはJABA東京スポニチ大会に出場。茨城日産との予選リーグ初戦は先制を許したものの「昨年まではリードされると雰囲気が悪くなってそのまま負けていましたが、今年は焦ることなく前を向いて戦うことができているので『負けそうにないチーム』になっています」(松浦主将)と、3回裏に浦和博(法大)の中越え適時三塁打などで逆転。すると、先発したルーキーの左腕・福島孔聖(大商大)は「今年で休部だからといって、気持ちを変えることはありません。チームが勝つ投球をするだけです」と6回を1失点に抑えて勝利投手になるなど、6対3で茨城日産を下して今シーズンの公式戦初勝利を飾った。
予選リーグの第2、3戦を連敗して決勝トーナメントへの進出はならなかったものの、「攻撃では初球から振っていって自分たちからアクションを起こすことができ、投手陣は粘りの投球でゲームをつくってくれました」と井上監督は評価。一方で「攻撃ではタイミングが合わない投手に対して、いかに引き出しを多くしていけるか。投手陣はストライクゾーンで勝負していけるように修正し、後ろを向くことなく次にどうするのかを考えていきたい」と課題を挙げた。
「休部にはなりますが、逆に言えば日本選手権までは戦えるので、二大大会に出場して優勝できれば最高です」と松浦主将。井上監督は「感動や勇気を感じてもらえるようなプレーをして『パナソニックは良いチームだ』と思ってもらいたい」と話しており、最後の最後まで観客の記憶に刻まれる熱い試合を見せてくれるに違いない。(取材・文=大平明)