
合同自主トレ中、スライディング練習を見守る香川・生山コーチ
生山裕人がコーチとして香川に帰ってきた。3年連続独立リーグ日本一を達成した、香川の黄金期を知る1人だ。2008年のドラフトで千葉
ロッテから育成指名を受け、12年に退団。9年ぶりの現場復帰となる。
「僕自身、もう野球の現場に戻るつもりは全然なかった。簡単に話すと、怖いというか。野球が」
コーチ就任の要請は昨年秋、近藤智勝監督からかかってきた1本の電話から始まった。今ならやれると考え、就任を決意する。
「(選手たちに)僕と同じ後悔とか、失敗はさせたくない。そこがすごく強いですね」
NPBで4年間、育成選手としてもがき続けた。クビになることへの不安。アピールしなければ! という重圧。グラウンドに立つことを恐怖に感じた原体験が、そうさせたくない思いにつながっている。
「こんなの書かせたんですよ」と、1枚の用紙を見せてくれた。『自己分析シート』と書かれている。
「何のためにここへ来たのか。独立リーグっていうのは、どういう場所なのかを明確にしたくて」
書いてもらった内容を見ながら、どうプロデュースし、どうアピールにつなげるのかを選手一人ひとりと話し合う。無難な成績、無難な姿では、到底NPBへは上がれない。
四国リーグからドラフト指名された全59人の経歴、在籍年数、指名時の年齢などを網羅した資料も渡した。可視化することで、自分のいる現在地を知ってほしいからだ。
とにかく野球をやり切ってほしいと、強く願う。
「僕ができることって、自分が持っている人脈とか経験、引き出しで選手たちに声掛けして、どうスイッチを入れるか? だけやと思っていて」
どんなアプローチをすれば、選手の心に火がつくのか。「そればかり考えている感じです」と話す。
人の心を動かすチームにしたい。ファンも、首脳陣も、スカウトの心まで動かす。若い選手たちが野球人生を懸けて、ガムシャラにプレーする。誰しもが、その姿を見るために球場へ足を運んでくれるのだ。
「独立リーグって、そういう場所やと思うし。人の心を動かしてなんぼやと思うので」
現場に戻っていなければ、きっと野球から目を背け続ける人生だった。香川に戻り、野球を好きだったころの気持ちを思い出し始めている。[リポート/高田博史]