頂点を目指し実直に鍛練を積む男は、新天地でのチャレンジを経て、持ち前の俊足と並ぶ武器を手に入れた。 リポート=高田博史 
頂点の先にNPBへの扉が待つと信じ、今日も全力で走る[写真=佐藤友美]
「こんな声ですみません」
インタビュー取材の席に現れた徳島・
柏木寿志(九州文化学園高)が、「こんな声ですみません」と言ってわびた。確かに、少し声がかれている。
「終盤、盛り上がり過ぎたので……」
前夜の高知との首位決戦、後期4回戦(8月26日、阿南市)に徳島は、9対3と逆転勝利を収めた。終盤の3イニングスで9点を奪った猛攻に、ベンチから声を張り上げ過ぎたのだという。
昨年まで3シーズン、関西リーグ・兵庫に在籍した。2年目に調査書が届き吉報を待ったが、指名には至らなかった。今季から新たな環境に身を移し、NPBを目指す。17盗塁(2位)を記録している俊足が武器だ。
徳島に来て、それまでの遊撃手から二塁手にコンバートされている。代わった当初は悔しさもあったが、やがて二塁手の奥深さに気付く。
「いろいろ考えて頭使って動くポジションだと思うし、それなりに肩も必要。深いところから捕って投げるっていうのも必要だし。いろんな動きがあるんで。正直、一番目立てるのかなって」
足以上の武器になり得るもの
徳島・橋本球史コーチは「ワンチャンある選手」と評する。足以上の武器になり得るものがある。高い守備力だ。
「雑なプレーをしないんです。バウンドとか合ってなくても体張って。あの守備があるから使い続けられる」
さらにパンチ力のある打撃も持ち味だ。橋本コーチが言葉を続ける。
「バッティングもうまくなりますよ。あいつ、手ぇ抜かないんで。練習も。ずっと真剣に打つから」
四国に来てからというもの、心境の変化が著しい。NPBに行きたい気持ちは格段に強くなった。投手も野手も、『ドラフト候補』と呼ばれる選手が次から次に出てくる。彼らに負けたくないと思う気持ちが闘志を奮い立たせる。
それまでは「1本打てたらいいな」と思って臨んでいたNPBとの交流戦が、数をこなすことで「打って当たり前」と考えられるようになった。
たとえどんなに体がしんどいときでも、グラウンドに1歩足を踏み入れれば気持ちのスイッチが入る。
「やっぱ球場に入ったら、チームの雰囲気が『やらなあかん!』って雰囲気なので。気付いたら、もうちゃんとやってるって感じですね。気を抜けない」
徳島にどっぷりと溶け込んでいる。だから大きな声も出るし、喉もかれる。後期優勝の瞬間が近づいてきた。
「今はホントにいい状態なので。チームが日本一になれるために自分のできることをやり切る。それで日本一になって、そこで評価してもらってNPBに行けたらいいなと思ってるんで」
男女9人きょうだいの五男坊。長男・裕樹さんも、かつて四国・九州リーグ・長崎セインツ(10年に消滅)に所属していた経緯もある。兄が果たせなかった夢を追う。
PROFILE かしわぎ・かずゆき●2001年12月5日生まれ。174cm72kg。右投右打。長崎県出身。O型。九州文化学園高から20年に関西リーグ・兵庫へ。3シーズンプレーしたのち、今季から徳島に入団。主に二番・二塁手として56試合全試合に出場、打率.255(9位)、3本塁打(7位タイ)、17盗塁(2位)、出塁率.320、長打率.355、OPS.675(8月30日終了時)。