常時150キロを超す直球は最大の武器だ。ただ、それだけではまだ足りない。周囲からの信頼を集める存在を目指す。 リポート=高田博史 
球速とともにクローザーとしての自覚も増す羽野[写真=愛媛球団提供]
「基本は真っすぐだぞ」
愛媛対香川前期2回戦(4月14日、松山市)は8回裏を終え、香川が6点をリードしていた。ここで愛媛は、本来勝ち試合ならクローザーを務める
羽野紀希(日本経済大)をマウンドに送り出した。
最終回、なんとかチームを鼓舞したいと考えていた。捕手・村野唯斗(札幌新陽高)にこう伝えている。
「ど真ん中にドシッと構えといてくれ」
まだ試合を捨てていない気持ちを見せたい。自分自身に「基本は真っすぐだぞ」と言い聞かせている。
電光掲示板のスピードガンが、立て続けに150キロ以上を表示する。打者2人を遊ゴロ、投ゴロに打ち取り、自己最速タイとなる154キロも2回出した。
「152〜154キロは、ブルペンでも出るぐらいなので。前とはもう、積んでいるエンジンが変わったというか」
もし追い込んだら、1年間更新できていない自己最速を狙おうと考えた。3人目の打者に対し、カウントが1-2となる。外角低めに決まった見逃し三振の1球が、157キロをたたき出した。この回投げた9球はストレートのみ、すべて150キロを超えていた。
進化して2年目へ
高校、大学と登板機会に恵まれなかった自分が、愛媛に来て154キロを投げた。“伸びしろ”が評価されれば、きっと指名してもらえるはずだ──。
「育成(指名)で行けるだろうっていう慢心があって……」
だが、どこからも指名はなかった。2年目は24歳になる。突きつけられた現実を前に、もう球速だけで指名してもらえる年齢ではないと確信した。
昨年11月、羽野を含む投手3人は、宇和島市で1カ月間、柚子狩りのアルバイトに勤しんでいる。仕事のあとは球団と業務提携するトレーニングジム『0Style(ゼロスタイル)』に通い、投球フォームを見直した。
投球の再現性が高まれば。つまり、同じフォームで投げられれば、与四球の多さを改善できるはずだ。同時に球速を上げるトレーニングにも取り組んだ。
平均球速が上がったことで、表示される球速はあまり気にならなくなった。心境も変化している。「四球を出したくない!」ではなく、「打者によっては、まあいいか」と思えるようになった。焦らないことが余裕につながっている。
さらにもっと大きな変化もある。
「去年と一番違うのは『勝ちたい!』って思うようになりましたね、試合に。去年は自分さえNPBに行けたらいいって考えだったんですけど、今年は負けたらホントに悔しいというか」
試合中、バックの野手に「テンポは悪くないか?」「守りやすいか?」と、積極的に声を掛けるようになった。
このチームで一戦一戦、勝っていく。
「羽野で打たれたら、しょうがない」
そう言ってもらえるクローザーになりたい。NPBへの扉を開く鍵は、その先にある。
PROFILE はの・かずき●2000年10月6日生まれ。187cm87kg。A型。山口県出身。新南陽高、日本経済大を経て昨年、愛媛入団。150キロを超すストレートを武器に、昨年3・4月の月間新人賞を受賞した。昨季は35試合に登板、4勝4敗6ホールド1セーブ、防御率4.91、奪三振率9.05(3位)。今季は7試合に登板、0勝0敗1セーブ、防御率1.29(4月30日終了時)。