力を抜いて、逆らわずに打つ。考え方の進化が結果に結び付いた。自然体で、目指す大記録をも引き寄せる。 リポート=高田博史 
手袋をしない独自のスタイルで、今季も安打を量産している高知・海辺[写真=山田次郎]
首位打者に2厘差
高知のリードオフマン、
海辺眺(山梨学院大)のバットが好調だ。対愛媛後期7回戦(8月17日、高知市)で二塁打と適時安打を含む3安打を記録し、打率を.380(2位)まで上げた。.382で首位に立つ徳島・
笹浪竜(東北福祉大)との差は、いよいよ2厘まで縮まっている(8月21日終了時)。
昨シーズンに比べると、甘い球を1球で仕留められるようになった。
「去年は初球の真っすぐとかをファウルにしていたことが多かった。それがなくなったのは結構、大きいです」
好調だった昨年、5月末の取材で「強く打つことだけを考えています」と話していた。だが、今は違う。
「ホントに力を抜いて、リ
ラックスすることしか考えていないです」
確かにフリー打撃では脱力しているように見える。ほぼノーステップ、中堅方向を中心に内角、外角とコースに逆らわずにはじき返していた。
力を入れ過ぎるとスイングのブレが大きくなる。8割ほどの力を使う中で、最大限ブレないスイングが理想だ。
高知に来て2年目、打撃が変わったと感じている。特に変わったのは考え方だ。それまでは、本当に10割打ってやろうと思っていた。
「打てない球もあるって割り切れたら、気持ちも楽になって。打てる球をしっかり打てるようになりました」
それを実感した打席がある。
前人未到の大記録へ
3安打を放った前日のことだ。対愛媛後期6回戦(8月16日、高知市)の第1、2打席で、先発の愛媛・
山田空暉(愛工大名電高)に内角ギリギリを突かれ、2つの三振を喫した。
これまでなら「あのコースを打ちたい」と、躍起になって次の打席に臨んでいたはずだ。だが「あれはしょうがない」と切り替えた。第3打席、それまでよりもボール1つ分、甘くなったストレートをとらえ、左翼手の頭上を越える適時二塁打にしてみせた。
逆方向への長打が打てるようになったのは、ミートポイントをこれまでよりも少し前に置いたから。広角に長打が打てるところを見てほしい。去年は口にできなかったセリフだ。
公式戦は残り14試合となった。もちろん首位打者のタイトルは欲しい。
「それも気にはなるんですけど、なんかいまは、4割に乗せたいっていう気持ちのほうが強いです」
そう言われて「4割?」と思ったが、本人はちゃんと計算を終えていた。
「残り試合で25打数15安打なら、4割なんですよ(200打数80安打)」
まったく届かない数字ではない。これまでのリーグ最高打率は、2021年に長谷部大器(元高知)が残した.386である。
首位打者と前人未到の大記録へ。力を入れ過ぎず、心も体もコントロールして挑む。
PROFILE うみべ・のぞむ●2001年9月19日生まれ。173cm75kg。右投左打。B型。神奈川県出身。横浜商科大高から山梨学院大を経て、24年に高知入団。手袋をしない「無課金」スタイルで安打を量産。三塁手として内野守備もこなす。49試合、打率.380(2位)、68安打(5位)、31打点(12位タイ)、3本塁打(10位タイ)、得点圏打率.429(2位)、出塁率.444(8位)、長打率.570(3位)、OPS1.014(3位、8月21日終了時)。