キャリアを重ね、手術も経て、2年ぶりに立った開幕戦先発マウンド。これから始まる物語への一歩だ。 リポート=高田博史 
奪三振率の高い速球派。右肘手術からの本格復帰を期す徳島・白川[写真=山田次郎]
初心への戻り方
2026年の四国リーグは「ファースト」、「セカンド」の2シーズン制で行われる。ファーストシーズン開幕戦では、昨年の年間優勝を争った愛媛と徳島が激突することとなった。
徳島対愛媛1回戦(3月28日、徳島市)、徳島の先発、
白川恵翔(斗山ベアーズ)にとっては、24年以来2年ぶり、自身4度目となる開幕投手だ。
やはり何度経験しても、開幕戦のマウンドは緊張するものだ。だが今回、過去3度とは少し心境が違う。試合の3日前ころから、意図的に「ヤバい、ヤバい」「緊張する、緊張する」と言い続けてきた。
「自分は緊張したほうが、いいパフォーマンスが出るタイプっていうのが分かったんで、緊張するようにしました」
これまで勝負の懸かった大一番で、好投したときのことを思い返してみれば、明らかに緊張していたと思う。逆に緊張がなくなると、いい結果を残せなくなる。白川流の「初心への戻り方」だったのだろう。
愛媛・
山田空暉(愛工大名電高)とともに、両先発が奪三振ショーを繰り広げる。白川は5者連続を含む8つの三振を奪い、5回でマウンドを降りた。7回2失点でマウンドを降りた山田は、6者連続を含む14奪三振と、昨年の奪三振王の貫禄を見せつけている。
試合は8回表に3点を奪って逆転した愛媛が、3対2で徳島を下し、敵地で白星発進を決めた。
「今年のための貯金です」
白川が徳島の公式戦に登板したのは、24年5月24日の対香川前期10回戦(丸亀市)以来である。その後、韓国へ渡り、SSGランダース、斗山ベアーズの2球団でキャリアを重ねた。24年9月に徳島に復帰したが、12月に右肘のトミー・ジョン手術を受けている。25年はリハビリ期間の1年だった。
「もう長い休みだと思って。めっちゃウエート(・トレーニング)しましたよ。筋トレ、めっちゃしました」
1年間を棒に振ってしまった焦りもある。本当に元のように投げられるのか? その不安も小さくない。そんなモヤモヤをトレーニングにすべてぶつけた。さらに強くなって、マウンドで躍動する姿を見てもらいたかった。
「貯金です、貯金。今年(26年シーズン)のための貯金です(笑)」
復帰の舞台となった昨年冬の「ジャパンウィン
ターリーグ2025」で152キロを記録し「いけるわ!」と思った。開幕前の練習試合でも順調な回復ぶりを見せる。開幕戦のネット裏でスカウトが構えるスピードガンは、150キロを超えていた。縦に落ちるスライダーやカーブも効果的に使えている。
「いいスタートが切れたなあ」と告げると、思いがけない答えが返ってきた。
「スタートとは思ってないです。始まってもないです。自分の中では」
白川のストーリーが本当に始まるのは、NPBかKBOに進んでから。いまはまだ、始まってもいないのだ。
「そういうことです。エピソード『ゼロ』っス!」
まだ「ゼロ」の7年目、圧倒的な存在になる。
PROFILE しらかわ・けいしょう●2001年6月4日生まれ。180cm85kg。右投右打。A型。徳島県出身。池田高から20年徳島に入団。最速154キロ、スライダー、フォークなどを武器に高い奪三振率を誇る。24年5月にSSGランダース(韓国)、7月に斗山ベアーズ(同)に移籍。12試合で4勝を挙げた。9月に徳島へ復帰。24年12月に右肘のトミー・ジョン手術を受けたため、今シーズンが本格的な復帰のシーズンとなる。