週刊ベースボールONLINE

山崎夏生のルール教室

立て続けに起こった珍アウト ケース毎に適用が違うタイムプレー/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

中日立浪和義監督がリクエストするも、3点差から反撃の機運を高める得点は幻に……


【問】5月18日の中日対阪神戦(8回裏=バンテリン)と、同27日の楽天日本ハム戦(3回裏=楽天モバイル)で立て続けにタイムプレーにより無得点というケースがありました。いずれも三塁での第3アウトよりも、走者の本塁到達が遅かったためだそうです。全力疾走で駆け抜けていれば得点になったようですが、これは走者のルール無知だったのですか? それとも怠慢走塁? また両方ともきわどいタイミングでしたが、三塁でのアウトと本塁到達が同時ならば得点ですか?

【答】まずはよく聞かれる「タイムプレー」ですが、その説明は規則5.08「得点の記録」に詳しく書かれていますのでここでは省略します。要は走者の本塁生還が第3アウトの成立よりも前ならば得点、後ならば無得点ということです。質問の2例はいずれも二死一、二塁からのレフトへのヒットで三塁進塁を企てた一塁走者が好返球によりアウトになりました。そのとき二塁走者は本塁への返球がないと判断し、最後の数歩を緩めていたように見えました。もちろんこのルールは知っていたはずですから悔いの残るプレーだったでしょう。ただしこの第3アウトがフォースプレーだったり、打者走者が一塁に達する前のアウトでしたら、たとえ本塁への到達が早くとも無得点です。

 タッグプレーでの第3アウトでしたら頻繁にありますが、時にはアピールアウトの場合にも起こります。よくあるのが飛球により走者が飛び出してしまい、その帰塁が返球よりも遅れるケースです。これは一見、走者と送球の追いかけっこのように見えフォースプレーだと勘違いされがちですが、実はリタッチが早いのと同様にアピールアウトです。

 とある県の高校野球春季大会で、ここを勘違いしてしまったケースがありました。1点を追う最終回一死一、三塁からレフトへの大きな打球が放たれ三塁走者は正規のリタッチで本塁に生還しました。ところが一塁走者はリタッチせずに飛び出してしまい、レフトから一塁への返球でアウトになってしまったのです。もちろん三塁走者の生還後だったのですが、フォースプレーと勘違いした審判団は無得点として1点差のまま試合終了。これはたとえ内野手が全員ファウルラインを超えアピール権が消滅していても、ルールの適用ミスですから絶対に訂正しなければなりません。

 また、第3アウトと本塁到達が同時の場合ですが、得点になるのは「そのアウトよりも先に」と書かれていますから、同時は含まれずに無得点です。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

よく分かる!ルール教室

元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング