
選手とともにNPB AWARDS2024にて表彰された最優秀審判員賞の敷田審判員[前列右]、審判員奨励賞の岩下審判員[同左]ら現役審判員たち
【問】毎年11月末にNPBアワードと称される表彰式がありますが、いつのころからか選手のみならず審判員もその場に立つようになりました。最優秀審判員賞や審判員奨励賞、ファーム優秀審判員賞、ファインジャッジ賞などの栄誉も与えられるように。選手の場合は明確な数字の裏付けがありますが、審判の場合は誰がどのように評価しているのでしょうか? 【答】2010年以前はセ・パ両リーグの内部表彰にとどまっていました。あまり公表されることもなく、納会の席などで会長からの賞状、そして金一封が手渡される程度。その表彰規定もあいまいで、いわば会長・事務局長・審判部長の専権事項でもありました。
大きく変わったのは私見ですが、04年に球界再編を巡る選手会のストライキの成功ではないかと。球団数削減案を撤回させ、これを機に12球団は共存共栄の運命共同体だという意識が全球団のフロントや選手会に広まり、と同時に審判員も野球界を支える仲間なのだと認識されるようになったのです。例えば、選手同様に節目である1000試合や1500試合には花束が用意され、引退試合では労いのアナウンスもされるようになりました。今はリクエスト制度の効果もあり、判定トラブルは激減して、ここ2年連続で危険球以外の退場者はゼロです。
そしてセ・パではなくNPB審判部となった11年以降はNPBアワードにも招待されるようになりました。13年に制定された最優秀審判員賞はいわば審判のMVP。これは12球団からの投票と審判長、事務局長、指導員らの審議により決定されます。技術評価はもちろん、リーダーとして試合を仕切る力が最重要ポイントとなりますから、やはりクルーチーフクラスのベテランの受賞が多いですね。昨年は「卍」で有名な敷田直人君(53歳、29年目)でした。
審判員奨励賞は次世代のホープに贈られるもので、30代後半から40代のいわば中堅クラスへの期待が込められています。昨年は岩下健吾君(36歳、14年目)が受賞しました。
ファーム優秀審判員賞は一軍レギュラー一歩手前の若手が対象で、かつてはイースタンとウエスタンで別個に表彰されていましたが、今は交流戦もありますので一本化されました。昨年の受賞者は松本大輝君(27歳、8年目)でした。
上記の2賞は主に審判長と5人の指導員の審議によります。やはり年間を通じて複数の元プロ審判の目から見た評定ですから精度も高いものです。選定の難しいのがファインジャッジ賞。昨年は4氏が受賞したのですが、難プレーをごく当たり前に裁く、これこそさすがはプロ、という証しです。こうした各賞が現役諸兄の励みになっていること、OBとしてもうれしい限りです。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。