
球審をする際には各社の最高級品質のマスク、プロテクター、レガース、球審用スパイク、ボール袋を着用する。さらには4月18日からヘルメットの着用が義務づけられた
【問】開幕早々に球審が立て続けに負傷交代するという事態が3件も発生しています。4月3日の西武対楽天戦(ベルーナ)ではファウルボールが左手を直撃、4月15日のロッテ対日本ハム戦(ZOZOマリン)では折れたバットが右前腕を直撃、そして4月16日のヤクルト対DeNA戦(神宮)では空振り後にすっぽ抜けたバットが球審の頭部に当たりその場で昏倒。すぐに病院に搬送され緊急手術を受け、今も治療中とのこと。つくづく審判も危険と隣り合わせの仕事だと思いますが、その身を守る防具はどのようなものを使っているのでしょうか? 【答】プロ審判と言えば心身ともに頑健な男たち、というイメージですが、やはり生身の体ですから病気もすればケガもします。37年間のNPB在任中には多くの現役審判の病死や気力の萎える姿を見ましたし、病気によるやむなき退職例も多々ありました。そしてグラウンド内でのケガは日常茶飯事と言っても過言ではありませんでした。中でも飛び抜けて多いのが球審時です。
私自身もファウル直撃で右手指を骨折したり、サイン違いの投球がマスク上部を直撃しひっくり返ったこともあります。そのときは額に血が滲み、大きなたんこぶもできました。かつてはそれでも交代せず、最後までやり抜くのが審判の美学のように思われていましたが、今はそんな時代じゃありません。そのための控え審判がいるのですし、身の安全が第一ということは徹底されています。
で、その身を守る防具ですが何しろ160キロ近い投球や打球が飛び交う現場ですから、軽さや格好よりも頑丈さが最優先です。用具契約をしている各社の最高級品質のマスク、プロテクター、レガース、球審用スパイクをフル装備し、ボール袋に試合球5個を入れるとその総重量は6キロ以上、価格も15万円以上になります。ちなみにマスクはチタン製、プロテクター、レガースは硬質プラスチック製で厚みも大きさもたっぷり、球審用スパイクは作業靴のように先端と甲の部分が硬く覆われています。それでも防ぎ切れない部分があるのはやむなしで、ある程度の打撲などは年俸のうちだと割り切っていました。
ただ3例目のように頭部への打撃は命にもかかわりますから、さらなる安全対策が必要です。4月18日の試合からは全審判員にヘルメットを着用するよう通達が出されました。万に一つでもあってはならない事故でした。川上拓斗審判員の一日も早い回復を祈ります。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。