
完投勝利を遂げ、お立ち台でファンと喜びを分かち合うバウアー[左]とソト[写真=川口洋邦]
いよいよ本領発揮というところだろう。6月14日の
日本ハム戦(横浜)に先発した
DeNAのトレバー・バウアー。7回二死で
万波中正にストレートを左中間席へ運ばれたが、2回一死で四球を出して以降はパーフェクトピッチングを続けていた。ほぼ完ぺきな内容だった。
圧巻は9回、だ。一死から
石井一成に右前打を浴び、クイックが若干、緩いから代走の
江越大賀に二盗、三盗を決められてしまう。一死三塁と一打同点のピンチで、まず
清宮幸太郎をスライダーで空振り三振に仕留めた。清宮に対してカウント2-1から投じた
ナックルカーブのキレが、またすごかった。高めのボールゾーンからワンバウンドして捕手のミットに収まった。清宮は中途半端なスイングで空振りしたが、打席ではストライクゾーンに来ると見えたのだろう。しかし、実際はブレーキがかかって、ボールゾーンへ鋭く曲がり落ちた。
さらに続く
加藤豪将に対しても圧倒したピッチング。初球、ナックルカーブで見逃しストライクを奪うと、2球目のスライダーは低めに外れてボール。そして、3球目。外角高めへのストレートは、この日最速の156キロをマーク。カウント1-2と追い込むと、最後はスライダーで見逃し三振に斬って取った。
9回、113球を投げ3安打1失点。来日初完投で4勝目を挙げたが、驚異的なのはこの試合は中4日での先発マウンドだったということだ。それでも最後の打者に156キロをマークする剛腕ぶり。レッズ時代の2020年にサイ・
ヤング賞を獲得した実績のあるバウアーだが、中4日にもかかわらず余力を残して9回でギアを上げるピッチングをできる投手は、そうはいないだろう。
何度も言うが、それにしても中4日で、である。だからこそ、中6日で回っている日本球界の先発投手なら、もっと最後まで投げ切る意識を持ってもらいたいという思いに至る。
例えば前日の13日、
阪神戦(甲子園)に先発していた
オリックスの
山本由伸である。この日の山本は阪神打線を寄せ付けないピッチング。毎回三振を奪い、8回まで2安打無失点。球数は112だったが、まだ投げられるように思えた。しかし、9回は
山崎颯一郎にスイッチ。山崎颯は2四球を与えながらゼロに抑え、山本は6勝目を手にした。
2年連続で沢村賞を獲得し、「防御率」「勝利」「勝率」「奪三振」の投手4冠に輝くなど、山本は日本球界を代表する投手だ。しかし、6月18日現在、9試合に登板して完投はない。最長は8回で、最多投球数も112球が2度。おそらく、このあたりをメドとしているのだろうが、バウアーが中4日で完投しているのを目の当たりにしてしまうと、中6日で先発している山本には完投しないのが少し物足りなく思ってしまう。昨年は4完投だったが、もっと完投できる能力があるのは確かなのだから。
山本が最後まで投げ切る姿を見せれば、それがオリックスの新たな伝統になる。
宮城大弥や
山下舜平大など、能力にあふれる若手先発は多い。彼らにもタフな先発になってもらいたいはずだ。そのためにはエースである山本のマウンドを守り切る投球をもっと見たい。
PROFILE 伊原春樹/いはら・はるき●1949年1月18日生まれ。
広島県出身。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、71年ドラフト2位で西鉄入団。76年
巨人に移籍し、78年古巣ライオンズに復帰して80年限りで現役引退。通算成績は450試合出場、打率.241、12本塁打、58打点。81~99年に
西武で守備走塁コーチを務め、西武黄金時代の名三塁コーチとして高い評価を受ける。2000年阪神コーチ、01年西武コーチから02~03年西武監督、04年オリックス監督を歴任。07~10年巨人ヘッドコーチを務め、14年は西武監督。現在は野球解説者として活躍している。